屈辱の苦情処理-4
ベッドの上にはTデパートの紙袋、それにタグがついたままのワンピースが置いてあった。
間違いなくあいりの売り場のもので、傍らにはちゃんと今日の日付のレシートもある。
盗難品を使った返品サギではないようだ。
男はあいりの背後に立ち、腕組みをしてあいりの一挙一動をじっと見ている。
「で…では……商品のほうを拝見させていただきます」
あいりは持っていたコートとバッグを床に置き、恐る恐るワンピースを手に取った。
キズはすぐに見つかった。確かに脇が大きく破れている。
しかし、販売する時にこれほどの破れを見落とすとは考えにくいような気がした。
不審な点はあるが、客が返品と言う限り従わざるを得ない。
この手の返品は確たる証拠がない限り店側が責任を負うしかないのだ。
それよりあいりは、一刻も早く処理を終わらせてこの息苦しい密室から解放されたくて仕方がなかった。
背後から浴びせられている男の強い視線が、背中から尻へ、そして足首へと纏わり付くのがわかる。
まるで制服も下着も透視されて、直接裸を見られているような不快感が身体中に駆け巡っていた。
「た……確かにキズがございました。気がつかずに販売してしまい、お客様には大変ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございませんでした……」
あいりは振り返って姿勢をただし、丁寧に頭を下げた。
男は相変わらず腕組みをしたまま蛇のような粘着質な視線であいりをじっと見ている。
「……で…では……すぐに返品処理をさせていただきます……」
あいりが床にかがんでバッグを取ろうとしたその時―――男が背後からいきなりあいりに抱きついてきた。
「……あっ……お…お客様っ……!」
「……確かに……いやらしい身体つきしてんな……」
ウエストを強く引き寄せられ、男の身体が背中に密着する。
ヒップを圧迫する硬い膨らみが男の激しい興奮を物語っている。
「……お…おやめ下さい……」
男から逃れようと前屈みになったところをベッドに押し倒された。
「……あッ……」
仰向けにされて両手を押さえつけられると、男の爬虫類のような顔が目の前に迫ってきた。
「……ハァ……こんなカワイイ顔して……淫乱とはな……」
男は荒い鼻息を吐きながらあいりの唇に貪りついてきた。
「……い……イヤッ……や…んんっ……」
男はあいりの可憐な唇を舐めつくし、ぬるぬるした舌を口の中へ侵入させてくる。
抵抗しようにも男の全体重で身体を押さえられて、あいりは全く身動きがとれない。
男はあいりの膝を無理矢理自分の足でこじあけて、あいりの太ももに硬く膨らんだ欲望を強く擦りつけてきた。
スカートが大きくずり上がって、パンストにつつまれた下着の部分があらわになる。
男はあいりのブラウスの胸元のボタンを器用に外し、ブラジャーに包まれた豊かな乳房をわしづかんできた。
「あっ……お…お客様……困りますっ……」
もっと大きな声を出して抵抗したいのに、Tデパートの制服が「客に逆らう」という行為にブレーキをかけている。
あいりの身体はまるで呪いにかかったように硬直してしまっていた。
男の指がブラジャーの中へと侵入し、膨らみかけた乳首に軽く触れると、なんともいえない甘美な電流があいりの神経を痺れさせた。
「…あっ……ああっ……お客様……お…おやめ下さい……」
男はまったく躊躇する様子はなく、捉えた乳首を親指と人差し指で捻るように刺激しはじめた。
昼間フロアで襲われかけた状況と違って、ここはホテルの密室である。
このままでは本当に犯されてしまう――――。
そう思った瞬間、三田村の言葉が頭をよぎった。
『大きい声だしたらええ。お客さんでもなんでもそんなん関係あらへん―――』
そうだ……。
抵抗しなければ―――。