逃げる俺、せまりくるメス-2
俺が半ば諦めて看護婦に運ばれていると、だんだんと奥まった所に来た。そして、とうとう俺は、ある一室に投げ込まれたのである。ようやく看護婦から解放された俺は、人違いだと訴えようとした。
「看護婦さん、俺は無実です。俺は田中といって、秋野じゃありません!」
「あ〜はいはい、わかりました。今から手術にいくのでそれまで待っててくださいねぇ。」
軽く受け流され、俺様沈没。そしてさっさと看護婦は出ていき、がちゃりと鍵をしめる音が聞こえた。
「…どうして、こんなことになったのだろう…」
俺は首をかしげた。間違いに気付いてくれないなんて、俺と「秋野さん」はよっぽど似ているんだな…。俺は変な所で感心した。
でも、いくら似ているとはいえ、血液型は違うはずだ。それを主張しよう。俺はそう決めて、看護婦が来るのを待った。
やがて、看護婦がやってきた。看護婦は何やら台の様なものを押してきていた。俺はまた口を押さえられる前にすかさず言った。
「俺はO型なんです、調べて貰えばわかりますよ!」
看護婦は、
「そんなこと言って…秋野さんがO型だってことくらい、私も知ってますがな。」
俺は愕然とした。どうやら血液型まで俺と「秋野さん」は同じならしい。
「違う!俺は秋野なんかじゃないんだ!信じてくれぇ〜」
そう喚く俺を、看護婦はまた軽々と持ち上げて、台の上に乗せ、運んでいく。暴れながらだんだん俺は恐くなってきた。やばい。このままだと本当に手術されてしまう。