今のままで...-8
グランドの端で俺はさっきの美咲の言葉を思い出していた。
「直輝君!チャンスよ!思いきって理彩を誘っみたら?」
「ムリだよ!どうせ断れるよ!」
「大丈夫!私が保証するよ!じゃぁ頑張ってね!」
そう言って美咲は去って行った。
「北原ちゃんに保証されてもなぁ.....」
思わず呟いていた。もしかしたら美咲は理彩から何か聞いているのかもしれない....だからといって理彩にもう一度告る勇気は俺には無かった。
「直輝!何しているの?早く行こう!」
理彩が誘いに来た。
「ああ....」
俺は理彩と歩き始めた。理彩は女の子の列に俺は男の列に並んだ。
(もし...理彩と一緒に踊る事が出来たら....理彩にもう一度告ろう)
俺はそう決心した。
フォークダンスが始まり中央の特設ステージで美咲と麻里が踊っていた。内側の輪で和哉と葵が踊っていた。気付くと直輝の順番が近づいて来ていた。
「まさかあんたと踊るなんてね!」
「こんなに人がいるのに...俺達縁があるのかなぁ?」
「偶然でしょ!」
私はいつものように答えて、何気なく内側のカップルを見ていた。
「うらやましい?」
直輝が聞いてきた。私は頷いて
「私も一応女の子だからね!」
「女の子ね.....」
「何か文句でもある?」
「イヤ....別に....」
前に冗談で告ってくれた時と同じ台詞を言ったら....また....そう考えてしまった....
「どこかに私の事好きになってくれる人いないかなぁ」
ちらっと直輝の顔を見た。
「いるよ」
(キター)
心の中でガッツポーズをした。
「えっ?どこに?」
「ここに!」
直輝は繋いでいる手を離して自分を指差した。
(ヨッシャー)
再び心の中でガッツポーズ!
「そんな事言うと本気にしちゃうよ!」
「いいよ!本気にして...」
「本当にいいの?」
「ああ...理彩行こう!」
直輝は私を内側の輪に誘ってくれた。
「うん」
私達は内側の輪に加わった。
「直輝!今更これは冗談だよって言っても遅いんだからね!」
私は嬉しさをこらえて直輝を見た。
「バァカそんな事言う訳無いだろ!」
直輝は照れくさそうに下を見ていた。
「私は鬼じゃ無いからクーリングオフの時間をあげる!」
「えっ?」
「この曲が終わるまで....この曲が流れている間だったら....今の冗談だよって言っても許してあげる!」
そう言い終わった途端その曲が終わった。
「クーリングオフの時間は終わったね!これからはあれは冗談だよって言っても通用しないんだからね!」
「そんな事言う訳無いだろ!俺はお前の事が好きなんだよ!」
「直輝!今の言葉忘れないでよ!訂正なんかしたら承知しないんだからね!」
いつもの通り私らしい言葉だった....直輝は嬉しそうな笑顔を見せていた。顔を上げて美咲を見ると、美咲は私達のほうを見ていた。美咲の唇が
「オ・メ・デ・ト・ウ」
そう動いて、私達に微笑んでくれたような気がした....