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今のままで...
【青春 恋愛小説】

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今のままで...-7

学校祭が始まり、美咲達の英語劇は初日の昼に行われた。その出来が素晴らしかったので、二日目の最後にアンコール公演される事になった。私達は二日とも見に行った。美咲達が演じたのは、難病にかかり命に期限を切られた少女と、その少女を純粋に想う少年との純愛を描いた何年か前に流行った小説をもとにしたストーリーだった。台詞は英語だがステージ上部のスクリーンに和訳が映し出されるので問題は無かった。映画やドラマ化されていて何回か見たことがあったので和訳を見なくてもなんとなく話の内容が理解出来た。驚くべきは美咲の演技力でいつの間にか演技に引きずり込まれた。それが和訳を見なかった理由の一つであった。
「あれっお前泣いてるの?」
美咲が死ぬ場面で直輝に声をかけられて自分が泣いているのに気付いた。泣いているのに気付かないほど美咲の演技に引きずり込まれていた。
「あんただって泣いているじゃないの....」
そう言うのが精一杯であった。私達だけで無くみんな感動して涙を流していた。美咲の相手にジェラシーを感じている和哉を除いて.....



「どうだった?」
私達の所に駆け寄って来た美咲は英語劇の衣装を着たままであった。
「すごく良かったよ!私二回目なのに昨日と同じかそれ以上に感動して涙が止まらなかったよ!」
私は美咲に抱きついて興奮状態で話した。
「本当に?ありがとう!」
美咲は嬉しそうな笑顔を見せていた。
「ところで....フォークダンスはどうするの?」
私の言葉に美咲の顔が曇った。
「実は....その事なんだけど....」
美咲は和哉のほうを見て
「ゴメンね!和哉!学校祭の実行委員会から、英語劇主役の二人で踊って欲しいって頼まれちゃって....」
和哉はイヤそうな顔をしていた。
「木下君悪いね!」
そう言って美咲の相手役と美咲の友人役の少女が現れた。
「もしかして....織田?」
直輝が声をかけると、
「はい!」
美咲の相手役が頷いた。
「和哉安心しろ!こいつは女だ!同じクラスの織田だ。織田麻里(おだまさと)だ。男のような名前だが正真正銘女だ。」
「私も聞いた事がある。演劇部の部長は男疑惑のある女の子オダマリだって....」
私が言うと麻里が
「疑うんだったら触ってみる?」
麻里の言葉に、和哉が手を出そうとすると
「ちょっと!和哉やめてよ!」
美咲が止めに入った。
「冗談だよ!」
和哉が笑いながら言ったが
「和哉!目がマジだったよ」
私が言うと
「私もそう思った...」
美咲が呟いた。
「冗談だよ!冗談!」
和哉は否定したけど美咲は疑いの眼差しを向けていた....
「ゴメンね和哉....今年は....」
「仕方ないよ....」
和哉は淋しそうに答えた。
「木下君良かったら葵ちゃんと踊ってくれない?」
麻里が一緒に連れてきた少女を指差した。
「葵ちゃんなら美咲ちゃんも安心するから!」
「余計に心配すると思うけど.....」
私が言うと美咲は
「大丈夫!葵ちゃんは男だから!」
「ええぇぇぇぇ」
私達は思わず声をあげてしまった。
「葵君だっけ?もしかして.....」
和哉が恐る恐る聞くと
「安心して下さい!僕はノーマルです!」
迷惑そうに答えた。
「君は本当にそれでいいの?」
和哉が聞くと
「部長命令ですし....美咲先輩の頼みですから...」
「それなら.....」
和哉は渋々承諾した。それにしても我が高校の演劇部はスゴい!完璧な美少年を演じる女の子織田麻里がいると思えば、どこから見ても美少女にしか見えない男の子松岡葵(まつおかあおい)君までいるのだから....
「それじゃまた....」
美咲達はそう言ってグランドのほうに歩いて行った。
「あっ!忘れてた!」
美咲が戻って来て直輝に何か耳打ちして戻って行った。
「美咲何だって?」
何度聞いても直輝は曖昧な答しかくれなかった。




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