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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-5

「エアル王!!城が見えてきましたよ!」
一台の馬車と沢山の馬に乗った兵士が列を成し、インテリオ城を目指していた。その中の、馬車を牽いていた兵士の一人が声をあげて叫んだ。それを聞いて馬車の窓から一人の男が顔を出す。
「あぁ…ホントに。今回の訪問は長かったから。久しぶりにゆっくりできるなぁ」
エアル王、クロック・カットを治めている男だ。両親を早くに亡くし、エアルが王に即位したのは彼が本当に若い時期だった。それから数年…エアルはまだ19歳にしかなっていなかった。
柔らかな黒髪がよく映える清潔そうな顔立ち。髪にも負けないほど真っ黒で大きな瞳。背は然程高くはないが可愛らしい感じの男である。
「んっ?」
窓から顔を出したエアルが大きな瞳を凝らし、城の門の前を見た。
「おいっ、アレは何だ?」
エアルが並んで走る兵に問掛けた。 エアルが見たのはユノに首を捻られた門番だった。裸に近い姿で地面に倒れている。見るに忍びないものだ。
馬車が城に近付くにつれて、それははっきりと輪郭を帯てきた。 エアルの目が完全に捉えた。血の気が引いていく…。
「おいっ!止めろ!!」
エアルは叫ぶや否や、馬車が止まるのも待たずにドアを開け飛び出した。 門番に駆け寄り抱き上げる。素肌を晒された門番は完全に冷えきっていた。
「誰か!毛布を持ってこい!!」
エアルが言う前に何人かの兵士が毛布を手に駆け寄ってきていた。
「早く部屋に入れて暖めてやれ。何人か、門番に就け!それから城の周囲を調べて…」
エアルは手早く指示を出すと、先立って城に入っていった。
「王!危険です。我々が先に!!」
言うのも聞かずに城に入るエアル。しかし、…城の中はエアルが想像していたのとは違い、至って平和そのものだった。
「どーなってんだ…あっ、お前!何か変わったことは無かったか?」
久しぶりに帰られた王に労いの言葉を次々と掛けてくる兵を捕まえ、エアルはそぅ尋ねた…━━


 長い通路を突き進み、ユノは階段へと辿り着いていた。渦を巻きながら階段は下へと向かっている。地下に続いているようだ。冷たいコンクリートの壁。忘れた頃にオレンジ色のランプが現れて、足元を照らし、進むのを手伝ってくれる。階段を降りきると、何の前触れもなく、開けた部屋が目の前に現れた。
「眩しいっ…」
薄暗い通路、階段とは違い、部屋には明るい光が溢れていた。
それは只の電気による無機質な光りではなく、透明感のある暖かな光りだった。 光りの原因はすぐに分かった。それは部屋の中央に見受けられた。
腰の高さくらいの大理石でできた台の上に、透明な円柱が天井まで伸びている。その円柱の中、丁度真ん中より下の辺りにダイヤ型をした、これまた透明な水晶が浮かんでいる。
「うっ…水晶の中にも何か…?」
ユノは眩しさのため直視できずに、目を細めながら光りを放つ原因の元へ向かっていった。 ユノが手を伸ばすと、指先が透明な円柱に触れた。…━と、その瞬間、光りがスゥーっと消えてしまった。

(やばい!光りが消えた…!?あっ!やっぱり水晶の中にも何かある)
ユノは初めて全貌を見た。
水晶の中には黒い霧のよぅなモヤモヤが拳くらいの大きさにまとまっているのがある。
「何これ。これがメインブロック??物体じゃないの?」
(他に何かないかな…?)
ユノは大理石の台の周りを調べ始めた……


━!?━━━
「開かれてる?」
エアルはユノが入った隠し扉の前に来ていた。
「まさかとは思ったが…お前達はここにいろ。他になにかされてないか調べておいてくれ」
エアルはついていた兵士にそう言い、通路に入ろうとした。
「でも…王に何かあっては困ります!!」
止めようと兵士が叫ぶ。エアルの足が止まった。
「何が困るんだ…?」
振り向きながらエアルは兵士を睨みつけた。
「いっ!い、い、いぇっ…」
あまりの気迫に兵士は怖じ気付いてしまった。
「ふんっ」
エアルはそのまま先へと駆け足で進んで行った。
「王様にはそのような事はタブーなんだよ。」
残された兵士の一人がエアルの後ろ姿を見送りながら口を開いた。
「そのような事って…?」
エアルに睨まれた兵士が尋ねた。
「昔色々あってな…。王様は可哀想なお方なんだ。」


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