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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-6

エアルは全速力で走った。
「っ…はぁ、はぁ」
(なんでもっとトラップを仕掛けなかったんだよ!!もぅ部屋には…メインブロックには…、着いたのだろうか…)
あの隠し扉以外には侵入者を足止めするものは何もなかった。エアルは階段を一気に駆け降りた。
部屋の入り口に着き、
「はぁ、…っ。すぅーはぁー」
エアルは深呼吸をして呼吸を整えた。中の様子を伺う。
(気配は…一人。ここまでずっと女物の香水の香りが残ってた。)
部屋の中を覗く。
後ろ姿が見えた。
(やっぱり女か)
服はクロック・カット城の兵士のものを来ていたが、
(いくら隠しても線が女っぽいのは隠せない。俺の城に女はいないんだよ!!)
エアルは音を立てないように中に入っていった。『女』はメイン・ブロックに夢中でエアルが入ってきたことに気付いていない。
エアルが『女』に向かって指をかざした。不意に『女』の帽子が脱げ、帽子に詰め込まれていた『女』の髪が流れるように現れた。
「…?」
不思議に思い、『女』が振り返った。エアルと目が合う。

『女』はエアルとは対称的に、西洋系でもこれ以上ないと言うくらい綺麗な金髪をしていて、更にマツゲまでが同じような金色をしていた。透き通った肌に良く映える、ピンク色の厚い唇。そして一番印象的な紅い瞳は取分け大きいわけでもなく、小さいわけでもないが、少し勝ち気そうな鋭い感じがあって童顔な顔に締まりを与えている。背はエアルの肩程までしかない。

エアルが見た『女』とは勿論、『ユノ』である。
ユノのその人間離れした美しさにエアルは一瞬目を奪われた。
「あっ…お、王様?お帰りなさいませ……」
ユノは兵士として誤魔化そうとしている。しかし、一方ではいつでも攻撃が仕掛けられるようにブレスレットに手を掛けていた。
「は、ははっ…」
エアルが吹き出した。
この期に及んで誤魔化そうとするユノが面白かった。
「なんですか…?」
ユノが眉を顰めて不快そうに言う。
「この城に女はいないんだ。侵入するならもっと事前調査をするべきだな…。」
エアルはそう言いながらユノに近付いていった。ユノは開き直ったのか、
「ちっ…ホントにここの王だったのか」
と言った。
「そー。若いでしょ?君も若いけどね。ってゆーかソレから離れてくれない??」
エアルがメインブロックの方に目を向けて言った。
しかし、ユノは一向に離れようとしない。飽きれ顔で再びエアルが口を開く。
「それをどうするつもり?」
「頂く」
そぅ答えるユノの目は真っ直ぐとエアルを見据えていた。
「それは無理だと思うよ?」
「どうして?これ、メインブロックでしょ?私、これが必要なの!」
困ったように眉を寄せ、ユノは少し感情的に叫んだ。
「なんで?」
当然、エアルが聞き返す。
「私…こんなこと言ったら驚くと思うけど、これはブルーストーンっていうモノの封印を解くためにあるの。私はその封印を解かないといけないの!それが私の運命だから……」
エアルは驚いた。話の内容にではない。
「どうしてそれを…?」
小さく呟く。
「えっ?今なんて…」
ユノは聞き取れないようで聞き返した。
「いや、なんでもない…」
エアルは冷静を装ってそう答えた。その言葉にユノの紅い瞳が曇る。
ユノの視線はエアルから反れることなく、その力強い視線はどうあしらっても退きそうにない事を思わせた。
エアルが溜め息をつく。
そして諦めたように話始めた。
「そこの台に、【ダリアン】って彫ってあるでしょ?」
エアルがメインブロックの方に目を向けて言う。確かめるようにユノもエアルの視線の先を見た。確に、大理石で出来た台には薄れてはいるが、【dalian】(ダリアン)という文字が彫られている。エアルは説明を続けた。
「それはこのメインブロックの名前だよ。そして、メインブロックにはその刻まれた名前の人以外は触れない。君はダリアンじゃないでしょ?だからここからこのメインブロックを持ち出す事は誰も出来ないの…当然、俺も。分かった?」
エアルの説明を聞き、ユノはゆっくりと思い出した。
(メインブロックに付いている名前と『持ち主となる人』との名前は同じ…確に本にはそうあった)
「…っそうだとしても、私には必要なの!どうして邪魔するの?」
全てを見透かすようなユノの瞳がエアルを捕えてはなさない。エアルはその視線から逃れるかのように目を臥せ、溜め息をついた。不意に自分の口が開く。
「メインブロックを守ることが俺の、生まれたときからの使命だった」
(何を言い出すんだ俺…こんな初対面のやつにする話じゃないのに…)
エアルは自分の口が意思とは反して勝手に動いているように感じた。
(でも…この女の瞳が…それにコイツはメインブロックの本当の意味を知っている)
自分から決して反らされる事のないユノの視線。エアルは覚悟をきめたようにそれを受け入れ、今度は自分の意思で話始めた。


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