〜吟遊詩(第二部†旅立ち・試練†)〜-4
「ある所に行って欲しいんだ。あのヘビに着いて行けば分かるから。この子サーペントって言うのー」
ボスがサーペントを指差した。
(へびー!?なんの冗談なの!?)
ミノアールは目を丸くした。が、それ以上にサーペントが驚いていた。
(冗談じゃねーよ!なんでオレが!)
サーペントはそう伝えるべく、口を大きく開いて喉をならした。その様子を見てアダムは
「平気だから。結構おとなしいよ」
と、ニッコリ笑った。有無を言わせないその態度を見て、サーペントは観念したかのようにミノアールの側によってきた。ミノアールはサーペントに指を這わせた。
(湿ってる…それに鱗が気持悪いわ…でも目は社長と同じくらい綺麗かも…)
執拗に撫でてくるミノアールに我慢できなくなりサーペントは毒の涎を巻き散らし威嚇した。
「きゃっ」
慌てて手を引っ込める。涎が落ちた床は煙を立ち上げて溶けた。
「やってくれるね?目的地に着いたらこちらから連絡するから。あぁそーだ。コレを…君のブレッドをサポートしてくれるから☆」
ボスはミノアールに片手に収まるくらいの長四角い箱を渡した。それからサーペントに
「インテリオキングダム、地図番号1750Z160」
と、案内先を告げ、さらに
「一番南の門をでれば目的地まで半月くらいで行けるから。」
などと意味不明なアドバイスまでしていた。
(どの門を出ても変わらないんじゃないかしら…?)
と、ミノアールは思った。こうしてミノアールとサーペントは出発することになった。
そして椿たちがじぃちゃんを殺してから2日が経ち、時間はユノが旅立った時となる。
━━ガサッ━
ユノが世界大陸地図を広げた。ユノの故郷、インテリオキングダムを囲むように4つの島国がある。インテリオキングダムもまた島国で、その他にも小さな国がちらほらとあった。
ユノは列車に乗っていた。
「まずは…一番近い『クロック・カット』に行く…か。」
クロック・カットまでは海に出たら一日船に乗るほどで着く。(海にでるまでが長いのだが…)それまでユノは列車を乗り継ぎ、ひたすら寝続けた。
何度もあの夢を繰り返し見た…。
━1週間後…━━
ユノは『クロック・カット城』の前にたどり着いていた。
メインブロックというものは国の宝として大切に納められているらしいので、とりあえず国王の所に来てみた、のだが……。
「考えてみたら…国の宝を渡してくれるわけないよね〜。」
ユノはため息をついた。
クロック・カットは割りと小さな国なので護兵もあまりいないと思われる。
「パクっちゃぉうか…でも本当にここにあるとは限らないし…」
(偵察するかぁ…)
良く見ると門番の服の腕のところにはクロック・カットのシンボルマークが縫い付けてある。岩を二つに割った間から鷲が翼を広げて顔を出している。そんなマークだった。
(あれが付いてるってことは…兵士の制服ってことかな…)
「ラッキー…帽子も被ってるし」
何か閃いたようで、そぅ言いながらユノは、ほくそ笑んだ。
ユノが音を立てないように門番の後ろに回り込む。声を出されないように自分の腕を噛ませ、そのまま門番の首を軽く捻った。
「うぅっ…」
うめき声を一つあげ、門番は崩れ落ちた。
「ごめんね。でも、もぅ誰かが死ぬのはたくさん…」
ユノは呟いた。
門番は気絶した程度だった。それでも充分酷いと思うが…━
ユノは門番の服を素早く脱がせ、自分がそれを着た。自分の長い髪を帽子に詰め込み、目深に被る。
門を開けようと手を掛けた。
━━ギィッ…━
重い音の割には案外軽く門は開いた。門から城は一直線上に見える。10mくらいで城の入り口だろうか…門から城までの間に、他に見張りらしき者はいなかった。
(格好は誤魔化したとしても…バレない保証はないからね)
ユノは注意深く城に近付いた。
門番という、厄介な関門さえ抜ければ後はすんなり侵入することができた。
「へんなの。他にはあんまり見張りがいないんだね…」
ユノは柱の陰に隠れつつ、中へと進んで行った。かなり奥まで来たとき、
……!!…━━
(誰か来るっ!)
遠くから話声が聞こえた。ユノは近くの壁の窪みにサッと身を潜めた。
二人の兵士がユノのすぐ横を通りすぎる。
会話が聞こえた。
「王は何時ごろ、お帰りになるんだっけ?」
「もぅお着きになるだろう。」
「宴の準備が間に合いそうにないらしいんだ。」
「なんだって!?じゃぁ厨房に行って……」
会話が聞こえなくなった。どうやら通りすぎたらしい。
「はぁー…」
ユノは胸を撫で下ろし、壁に寄りかかった。
(王様は出かけているんだ。見張りが少ないのも頷けるな…。城に残っている兵は僅かだけってことか)
と、ユノが考えていると、
「んっ…!?」
ユノは寄りかかっている壁に違和感を感じた。振り返り調べてみる。
「やっぱり…隙間から風が出てる。」
なるほど、僅かではあるが壁の向こうから風の流れが感じられる。
(どこかに繋がっているんだ)
ユノは窪んでいる所の壁を所々押してみた。壁はレンガ造りである。
(安易だけど、こーゆーのってどっかのブロックを押すとガコッと…)
━ガコッ!!━━
(んで、そのあと壁がギィーっと…)
━ギィー…━━
「…ホントにそぅなったよ。安易な造り…」
窪みだった壁は開かれ、ユノの前に先の見えない通路が現れた。
ユノは躊躇せずに道形に進んで行った。
「こんなに隠された道の奥にあるのが普通のモノな分けないよね。ってことはぁ…」
(メインブロックに決まってる!!)
胸が高鳴り、足早に奥へと突き進む…━