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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲(フーガ)〜第一章(前編)〜-14

14 「悩みや愚痴を何度も聞いてもらいました。
そして、訓練もしてもらいました。
彼、いつも言ってたんです。
『俺は冥界が好きだ。そして俺は冥界の将来がたくせる者達の訓練ができて本当に幸せだ。』って。」
癒姫の目がどんどん涙を作っていき、それが頬を伝って流れ落ちる。
だから、と癒姫が涙声で続ける。
「私、信じられないんです。
アキレスさんが四神様を殺しただなんて…。私…どうすれば…?」
「…本当にそう思っているのか?」
え?と癒姫が涙声で言う。
それを聞いてきたのは目の前にいる闘夜であった。
癒姫は何故そんな事を聞くのか?と思いながら、
「当たり前じゃないですか!!」
と激しく叫ぶ。
通行人が癒姫の方を見るが、全く気にせず、癒姫は泣く。
すると闘夜は突然微笑んで、癒姫の方へと手を差し伸べて、
「じゃあ行こう。」
と言った。
「お前が本気でそう考えているんなら確認すべきだ。
お前が言うアキレスは何をしたのか?
アキレスは正しいのか、間違っているのか?
今のお前はこの質問にも答えられない。そうだろう?」
癒姫はなきじゃくって答えない。
それでも闘夜は話を続け、
「ならば行こう、アキレスという者を知りに。
お前にとってそれは重要なことだろう?」
「で…でも…!私…怖いんです。」
「何が怖いんだ?」
「だって…もしアキレスさんが本当に悪いことをしていたとしたら…私、どうすればいいか…」
癒姫はへたりこんだ。
「じゃあそうやって泣いているとどうすればいいかが分かるのか?」
そんな事、と言って癒姫は黙った。
今の自分は明らかに矛盾した行動を取っていることが分かっているからだ。
「癒姫、立つんだ。今のお前には残酷すぎる状況かもしれない。
そんな状況すら主観的に感じられない俺には言う資格がない事かもしれないが…、
アキレスの元に行くんだ。」
そして、と闘夜が一呼吸おいて、
「確かめるんだ。真実を。
そこで何もしなかったら何も分からずに全てが終わってしまうかもしれない。
お前はそれでいいのか!?」
「いや!よくない!!」
癒姫が叫んだ。
「よくない…です。そんなの…嫌です。」
闘夜はそのセリフを聞いた後、再び手を差し出す。
「なら行こう。大丈夫だ。
俺も…何もできることはないかもしれないができる事があるなら何でもしよう。
もしもという未来を思考する前に今に対する行動を見せてくれ。」
「神無月さん…」
それは、まるで救いを求めるかのように、
それはまるで決意したかのように、
癒姫は闘夜に手を差し出した。
涙はもう止まっていた。



高速道路のような道を一台のバイクが走っていた。
しかも二人乗りだ。
冥界には交通ルールに『二人乗り禁止』はない。
そしてそのバイクはスピードを200キロを出して走っていた。
「ヘマしないでよ!龍也!」
後ろで前の男の腰に手を回していた女が前にいる男に向かって話しかける。
「ああ、俺は楓を乗せてる時に事故った事は一度もねえんだ。」
「当たり前でしょ!?事故ったらアンタを事故って事で死ぬまで殺してるわ!」
「いや、それ普通に殺人だし…」
龍也のアクションなしのツッコみを楓は無視して、
「ねえ、どう思う?」
「何がだよ?」
「とぼけないで、アキレスの事よ。」
「まあ、魔がさしちまったんだろな。」
「ちょっ、アンタ本気で言ってる?」
「もし事態が悪い方向に進んでるなら、の話だ。
俺ァ、常に悪い方向も考えてる頭脳派だからな。」
「戦闘中も日常生活も頭の中は常に単細胞のくせに。」
「…よく聞こえないなぁ、楓さん。」
龍也がとぼけていると、楓が言う。
「じゃあ聞こえないままでいいから。話、次に行っていいかな?」
龍也の返事も待たずに楓は話を次に持っていくことにした。
「アキレスは…どうして四神様を殺しちゃったのかな?」
「…さぁな。同じような質問すんな。」
龍也はさらにバイクのスピードをあげ、
「それはこれから確かめに行くんだから。」


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