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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲(フーガ)〜第一章(前編)〜-13

13 「ふぅ…。」
「やるじゃねえか。」
龍也が笑っている。
一方で、楓はほっとしている。
闘夜はそれを見て考える。
…相手は俺を殺す気で闘っているんだろうか?
龍也の行動を見ていると、それはまず間違いないだろう。
だが、楓の表情を見ていると、どうもその気はないように見える。
…それに、相手が俺と戦う目的は何だ?
そう考えていると、目前に龍也が迫ってきていた。
「おいおい、戦いの最中に考え事かよ?」
目の前には『威太刀』と呼ばれる剣を持った達也がいた。
…バカな!?
ありえない、と闘夜は思う。
ついさっき、龍也は自分に向かって剣を投げてきていたはずだ。
だが、目の前にいる龍也は先ほど投げた剣と同じものを持っている。
「何で俺が剣を持ってるか、不思議か?」
気が付けば、その剣先は闘夜の首に持っていかれていた。
「ああ…、不思議だ。教えてくれないか?」
闘夜は手を挙げながら言った。
降参、と言う意味の手だ。
癒姫はずっと闘夜の戦いを見ているが、いまだにおろおろしている。
龍也が剣を納めていないからだ。
「ま、それはここで言う話じゃねえからガヴァメントにでも行って話そうぜ。
いろいろとな。」
闘夜にはいろいろ、という所が気になったが、
「分かった。話を聞こう。」
と言って立ち上がる。
龍也はここで、ようやく剣を納めた。
すると、闘夜が付け加えた。
「どうせここで俺を殺す気はなかったんだろう?」
「ああ。でもこの戦いの事を言ったらお前を殺しとけ、と言う連中はガヴァメントにはいるだろうがな。」
「…そうだな。」
と言って、闘夜はちらりと癒姫を見た。
癒姫は見られた事にたいして、うつむく事で返事をした。
そこに楓が癒姫に声をかけてくる。
「気にしないの。」
楓はまず、そう言った。
「あんたの事情は知ってるよ。だから、気にしないの。」
「…ありがとうございます。」
「この際だからあんたもガヴァメント、来るでしょ?」
え?と癒姫が言う前に楓が癒姫の手をとる。
少し、汗がかっていた。
龍也が闘夜を殺してしまうのではないかと、心配していた時にでてきた汗だろう。
癒姫はこの2人は闘夜にとっても自分にとっても敵にはならないだろう、と判断し、
「はい。」
と言う二つ返事で返した。
そして四人は『ガヴァメント』へと向かう。



その時であった。
闘夜を除いた3人から音がなった。
何かの警告音のような音が。
その音に反応して3人は何かを取り出した。
それは携帯電話のような物だった。
警告音の次にそこから聞こえたのは声だった。
『御剣 龍也、三神 楓、一神 癒姫、以上の『戒』のメンバーに告ぐ』
聞こえてきた声は男の声であった。
『アキレス=ファナティクが四神(よつがみ)様を殺害』
そのセリフを聞いた時、3人が同時に驚いていた。
「嘘だろ…?暴走!?…何でアキレスが!」
「信じられない…、何かの間違いなんじゃないの!?」
「何で…?」
男の声はそんな龍也と楓、癒姫の声を無視して(もとより聞こえていないが)言った。
『アキレスは現在ガヴァメントに向かっております。』
一息おいて、
『彼らがガヴァメントにたどり着く前に戒めてください。』
龍也と楓、そして癒姫はしばらくの間止まっていた。
動かない。
闘夜にはだいたい分かってきた。
癒姫から話を聞いている限りだが、『戒』と言う組織は軍隊の力を持った警察のようなものだ。
警察は犯罪者を逮捕しなければならない。
それは”義務”なのである。
だが、今の彼らがこうして立ち止まっているという事は、
…アキレスという男はこの3人と親しい関係にあるようだな。
闘夜はそこまで分かったとしても、3人に声をかけることは出来ない。
自分は『戒』ではない。
その前に、『冥界』の住人でもない。
いわば『部外者』なのだ。
そんな存在である闘夜が3人に対して何も言えるはずがない。
四人はしばらく沈黙していた。
が、最初に口を開けたのは龍也だ。
「って、こんな事しててもはじまらねえよ!!」
それは、誰に対しての言葉なのだろうか?
本人には分かっているはずだ、と闘夜は敢えて口に出すような真似はしない。
「楓、行くぞ。」
「…ええ。」
2人は走っていった。
そして、闘夜と癒姫だけが残される。
癒姫はなぜか動く気配すらない。
「お前は、どうするんだ?」
闘夜は口を開いた。
「…。」
しかし、癒姫はそれでも黙ったままだ。
「あの2人、行っちまったぞ。」
「…はい。」
「なぁ、アキレスって奴の事聞いていいか?」
癒姫はうつむいていた顔を闘夜に向けて、苦笑し、
「はい。」
と言った。
そして説明をはじめる。
「アキレス=ファナティク。四神様に家と職を与えてもらってからずっと四神様に忠誠を尽くしてきた人だったんです。
その職というのが、『戒』の戦闘指南役だったんです。」
だから『戒』の人はみんなアキレスさんを知っています、と付け加えて癒姫はさらに話を続ける。
「彼は訓練の時には厳しくて、プライベートの時にはすごく優しい人だったんです。
だから『戒』のみんなに慕われてて…。
それにすっごく強い人なんです。だからみんなの憧れでもあったんです。」
私も、と癒姫が付け加える。


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