〜吟遊詩(第1部†序言・運命†)〜-2
屋根の上の大きな十字架のバックに大きな満月が黄金の色を奏でている。そのすぐ下にユノの部屋がある。その造りは屋根裏部屋に近かった。ベッドに身を投げ出すとユノは早速本に没頭することにした。内容は【ブルーストーン…】の文字から始まっていた。
【ブルーストーンは人間が誕生する前からこの星に存在していた大きな力を持つ石である…】内容を要約するとこんな感じだ。
【ブルーストーンは絶大な力を持つ故、誰もがその力を欲した。千年と余年前、その力を巡って争いが起きた。悪の巨大組織ブラインド・チェリー(BC)はブルーストーンを兵器として求めた。ブルーストーンには数人の戦士が護衛としてついていたが戦いも虚しくBCの手に落ちてしまった。一度、兵器として使われたブルーストーンの力を沈めるには千年の時を要する。そのため戦士達はブルーストーンをBCから取り戻すことに成功したのち封印することによって千年の時を過ごすことにしたのだ。しかし再び争いが起こることを恐れた戦士達はこれから未来を生きるであろう五人の人間に力を与え、千年経った後、敵よりも先に封印を解きブルーストーンを守ることを使命として与えたのだ。その五人は通称『持ち主となる人』と呼ばれ、汚れなき血を持つことを条件とする。封印の解き方は……━━━━】
最初は半信半疑で読んでいたユノだったが『五人の人間に力を…』の文字が目に入ると、昼間のじぃちゃんの言葉と重なり鼓動が早くなった。ページをめくる手は止まらない…━━。
「あそこがじじぃの家か…」
夜の闇に紛れて声がする。その声の主は庭にある木の上から教会を見下ろしていた。腰以上あるであろう髪は高く一つに縛り上げ、短いスカートのヒダと一緒に風に流れをまかせている。
「ったく…じじぃが余計なことをしやがるから。」
少々言葉遣いは乱暴だが紛れもない女である。そのかたわらには金色の髪を四方にたてあげた男がいた。
「でもなんで我が組織は今までじぃ様の計画に気付かなかったのでしょう…」
女より幾分も上品な言葉遣いで男は女に訪ねた。
「じじぃはあの時死んだと思ったんだよっクソがっ!」
女はその言葉からは想像てぎないが目は大きく、真紅の口紅を纏っていて印象的な顔立ちをしている。
「今度こそ僕が仕留めますよ」
そぅ言いながら掲げた男の拳には先のとがったメリケンサックがはめられて、不気味な輝きを帯ていた。
「お前ら…位置につけ」
女がそぅ指示をだすと周辺の木々が揺れ、全身黒の服に身を包んだやつらが一斉に姿を現した。軽く500人はいる。
「お前はこっちだよ!」
女は金髪の男にそぅ言うと木から飛び下りバックから月の輝きを浴びている十字架のてっぺんを目指して走り出した。
━━パタンっ━
一通り読み終わったユノが本を閉じた。
(私がその変な石の封印を解く?ピンと来ない。じぃちゃんはっ…もぅ寝てるか…)
時計は夜中の1時すぎを指していた。
ユノの部屋とは逆の方に先の見えない長い廊下がある。それを丁度半分過ぎたあたりにじぃちゃんの部屋は位置している。
気持よさそうに寝ていたじいちゃんがフと目を覚ました。もちろんサングラスははずしている。枕元には置いてあるのだが…。それを手にとると
「やれやれ…敵方もせっかちサンじゃけぇなぁ」
と呟いた。
月の光を浴びて黒い桜の花びらが空を舞う…。
「ヒマですね…」
舞う花びらの原因はすぐ分かった。金髪の男だ。
「皆が配置に付くまでは待機だからしょうがないだろ。ってゆーか、お前…何してんだ?」
女が飽きれ顔で問掛ける。
「桜で花占い?」
「なんで!?女々しいよっ」
「忘れちゃったんですかぁ?桜はボク達ブラインド・チェリーのシンボルじゃないですかぁ☆」
「そーじゃなくて…」
と、まぁこんな感じの会話が教会の屋根の上で繰り広げられているその下の庭では、何か黒い集団がモゾモゾとうごめいていた。先程女に命令されていたやつらが徐々に配置に着き始めているのだ。それを横目で見ながら更に男は言葉を続ける。
「そーいえばじぃ様のブレッド(能力)って何ですかねぇ」
「調べてねぇのかよ…」
女は相変わらず飽きれ顔で呟いた。一息つくと女は説明しだす。
「じじぃのブレッドはとんでもない化けもんだ。」
「椿さんより??」
「それは…うちの方が上だよ!それに、年には勝てないさ。」
「それは椿さんも一緒じゃないですかぁ♪」
「(怒)…」
髪の長い女の名前は椿といった…。椿は更に続ける。
「とにかく!じじぃのブレッドは自分の想い描いたものを物質として現実に現せられるんだ。錬金術のよぅなものだなっ」
とにかく椿はところどころ男に言葉を遮られながらもそこまで説明すると深く息を吸い込んだ。そして…━━