スタートの時-9
「いたぁ!!」
本を殴った手が痛い!痛いっ!
なんでぇ?昨日はサダニさんの影を殴った時はぜんぜん痛くなかったのに。
影だから?
いや感触は確かにあったのに。
って…そんな事を考えてる場合じゃない。
「いたっ!痛いって!あっいたっ!!」
僕の身体にボカボカとぶつかる本。
本気で痛いよぉ。
けど…所詮は本だ。
「あたっ!痛いなぁ…もう!!」
両腕で頭を庇いながら歩みを進める僕。
『はぁぁぁぁっ!』
尚も威嚇しながらジリジリと後ろに下がる図書委員さん。
そして…。
「わぁっ!あっぶっ!!」
飛びずさるように退く僕。
目の前にバタン!って本棚が倒れきたぁ。
さすがにこれはヤバいよ。
取り敢えずは逃げよう。
僕は気絶したままの隆の身体を引きずるようにして。
図書室からホウホウの態で逃げ出した。
目を醒ました隆を家に帰すと…。
慌て鵬蓮さんの元に向かった僕。
お寺の本堂では…。
「参りまするっ!!」
ブンブンと薙刀を振り回し、貞ちゃん斬りかかるお菊ちゃん。
「くらうかっ!!」
高い伽藍近くまで飛び上がり、その薙刀をかわす貞ちゃん。
そのままくるりと後方に一回転し着地。
そして、バッと差し出す右手の平。
飛び出す二発の光の球。
お菊ちゃん目がけて飛んでく。
「なんのっ!」
下から掬い上げるように…そしてまさに返す刀でその薙刀を振り下ろすお菊ちゃん。
薙刀に弾かれた光の球。 床に落ちて消えた。
「すごっ!」
二人の激しい訓練に呆気に取られ。
本堂の前で立ち尽くす僕。
「二人とも素晴らしい戦闘能力を持っています」
不意に後ろから聞こえる声。
激しい乱取り?を繰り広げる二人から目を離し、振り向くと。
ヤンクミかって感じの赤ジャージ姿の鵬蓮さん。
肩までない短めの髪を無理クリ、ポニテにしてる。
そのせいか切れ長の目が吊り上がり気味だけど、綺麗な体育の先生って感じでいいねぇ…マナジリが下がちゃう僕。
いや…デレッとしてる場合じゃない。
お菊ちゃんや貞ちゃんもあんなに頑張ってんだし。
「鵬蓮さん!僕ももっと強くなるにはどうしたらいいですかっ!」
鼻息を荒げる僕。
「俊樹さんは霊力は今でも充分に高く、この後の霊との接触にて益々高まってゆくと思われますが」
薄く唇に小さな笑みを湛える鵬蓮さん。
「霊力が強くなれば…本とか本棚を殴っても手が痛くなくなりますか?」
食い付き気味の僕。
「いえ…肉体の強さはまた別物、ただ暗黒霊等と戦う際は何より霊力が物を言いますが」
訝しむような鵬蓮さん。
「でもさ…念動力みたいな力で石とかぶつけてこられたら?」
僕の必死。