スタートの時-7
放課後。
鼻の下を伸ばしきったまま図書室に向かう僕と隆。
ただ…裸の若い女性と言っても相手は幽霊だ。
隆の奴は少々へっぴり腰気味に僕は全面に押しだそうとしている。
僕もあまり平然としているのは不自然なので。
「こ…こら…あまり押すんじゃないよ」
と少しビビってる風を装っている。
本当のトコはいきなりのドッキリは別として。
幽霊さんにはすっかり免疫が出来ちゃってる僕。
そんな僕は。
鵬蓮さんに連絡を取るべきかどうか…その事で頭がグルグルだ。
まぁ…お菊ちゃんにしても貞ちゃんにしても出会いは僕ひとりきりの時だったし。
しかも相手は裸の幽霊さん。
お菊ちゃんまでついて来たら…いや間違いなく来るだろ。
このデレッとした僕の感じをお菊ちゃんに見せるのはなぁ。
やっぱちょっと気が引けるし、あの薙刀捌きが脳裏に蘇ってしまふ。
おし!まずはひとりで頑張るか。
なんて更に鼻の下を伸ばし、目尻を下げちゃう僕だった。
図書室は、その周辺からしてシーンと静まり返り。
それっぽい雰囲気を醸し出していた。
校舎の最上階、四階のL字に曲がった列びの短い方の端。
角部屋でもあるし。
まだ窓の外も明るいから。
暗いって事はないんだけどさぁ。
何だろう…この妖気漂うような感じは。
えっ!妖怪アンテナ!?僕の髪の毛が逆立ってる!!
…って、おいっ!
「何しているんだ…隆くん!」
「いや…妖怪アンテナだ」
擦ったセルロイド製の下敷き?を背後から僕の頭の上に翳している隆。
僕の髪の毛が逆立っているは静電気のせいだ。
「バカな事をするんじゃない」
そう言う僕の声はついヒソヒソ声。
「いや…少しでも和んだ方がいいかと」
下敷きを下げて、ポリポリと頭を掻いてる隆。
少なからず緊張する場面でも…。
やはり隆は侮れない。
「ってか…入るとしますか」
そんな隆を放っておいて図書室のドアに手をかける僕。
「失礼しまこうさく…」
そっと開ける。
シィ――――ン。
って音が聞こえて来そうなくらい図書室は静まり返っていた。
腰引き気味の泥棒スタイルで図書室に入り込む僕と隆。
「だれかー!いませんかー!」
小さな小さな声で叫びような隆。
まぁこれもお約束みたいな行為だって。
そんな真面目なのか不真面目なのか。
よく判らない隆を余所に。
“なにか…いる”
僕ははっきりと何者かの気配を感じてる。
しっかし…凄いなぁ。
こんな感覚まで持つようになったのか…僕。
その感覚がゾワッて粟だった。
そして次の瞬間。
バサッ!バサッ!バサッ!
「わぁぁ…」
何か降り注ぐ音と短く小さな隆の悲鳴。
振り返ると…。
本棚から落ちた無数の本。
その本に埋まるように倒れた隆。