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『縛られた女』
【SM 官能小説】

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『縛られた女』-9

そこで僕は、気づいて気にしていた君が僕の子どもかもしれないことを理由に、彼女の申し出を断った。しかし、そのことは確かにすごく気になってはいたが、今思うと理由というより口実に近かったのかもしれない。

そして僕が断った本当の理由は、長年封印してきたことで「Sである本当の僕」として、今なおまばゆく輝いている彼女の「Mである本当の彼女」の、「居場所」になれる自信がもてなくなっていたからなんだ。

それを彼女は、瞬間的に悟ってしまったんだと思う。
そして、「Sである本当の僕」を失ってしまった僕とは、もう見たくはないと思ったことだろう。
だが、君の担任教師である僕とは、否が応でも顔を合わせなければならないときがある。
それにはとても耐えきれないと思ったから、彼女は自殺を決意したんだと思う」

「…」
あまりにも意外な話の展開に、真由は目を見開き、口を少し開いたままでいた。

「しかし、彼女は僕が理由として上げた可能性を、きちんと確かめなければいけないと思い、さっきいったように、もしその通りだとしたら君にいずれそれを告げなければならないから、その時期がくるまで自殺は思いとどまることにしたんだと思う。

そノ後頼んでおいた判定の結果が届き、僕と君とは親子関係ではないとわかったので、自殺した日彼女はこれと同じ書き置きをプリントし、僕が彼女を描いた絵と一緒に包んで学校を訪れ、貸してもらっていた絵だから僕に返しておいてくれと事務室に頼み、家に帰って自ら命を絶ってしまった。

書き置きと絵は、お通夜の日に僕の手に渡った。
そして、この書き置きを何度も読んで考え抜いて、彼女が自殺した本当の理由は、今話してきた通りに違いないと確信したんだ。

だから、だから…、僕が『Sである本当の僕』を今もしっかり持ち続けていたら、彼女は自殺なんかしなくてもよかったんだ。
本当に、本当に…、申しわけないことをしたと思う」
佐々木は椅子に座ったまま、うなだれるようにして真由に深く頭を下げた。




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