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『縛られた女』
【SM 官能小説】

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『縛られた女』-5

5.謎を解くサイン

真由は、衝撃を受けていた。

母の美有希は、書き置きを遺していた。
しかも、自分にでも、父にでもなく、かつてM奴隷として仕えたSの男にだけ…。

そのSの男とは、どうやら十数年前に別れたらしい。
十数年前といえば、父が海外勤務をすることになったのはその頃だ。
どうやら、母が父に一緒について行くことになったので、2人は別れたようだ。

母と父が結婚したのは、父が海外勤務になる2年ほど前だ。
だから母は、人妻の身でありながら、そのSの男にM奴隷として仕えていたのだ。
しかも母は、Mである自分こそ本当の自分だといいきり、そのSの男が描いた責め絵こそが海外にいる間もずっと、本当の自分の「居場所」になっていたというのだ。

(ママはMだったのね。しかも、それこそが本当の自分だと思っていたなんて…)
真由は、衝撃の重さに、ブルブルと身体を震わせていた。

(ママ、ママ、すっごくびっくりしたけれど何だか返って、親しみがわいてきたような気がする。
だって、だって、真由は多分ママの血を受け継いでいて、やっぱりMなんだとしか、思えないんだもの…)
そう心の中でつぶやくと真由は、しばらくの間さめざめと泣いた。

そして一泣きして心が鎮まると、疑問が次から次へと湧き出してきた。

(帰国してほどなく、思いがけずに出会ったSの人って、いったい誰なの?)

(「決して行きずりでは済まされない」出合いって、どういうものだったの?)

(それまでMである本当のママの「居場所」であったという絵が、「「否が応でもあなたと顔を合わさなければならないときもある状況のなかでは、本当の「居場所」であるあなたの代わりにはなれない」というのは、わかる気がするわ。
でも、その絵って、いったいどんな絵だったの?)

(それになぜだかはっきり書いてないけど、以前のように「居場所」になってほしいとママが頼みにいったとき、その人が断わる理由としてあげたある可能性って、いったいどんな可能性だったの?)

(そして、その可能性が否定されたからといって、なぜママは自殺しなければならなかったの?)

(それから、ママはその人に「今後も」力になってやってほしいと頼んでいるけど、その人って、私の知っている人なの?)

最後の疑問に至った時、真由はある人物のことが頭に浮かびハッとしたが、
(ううん、まさか、そんなことは…、とても信じられない)
と、首を振って、その考えを否定した。

(あ、もう一つのファイルを開いて見れば、もっと何かわかるかも…?)
真由は突然そう思いつき、文書のファイルを閉じ、もう一つのファイルを開いた。

「うわあ!」
出てきた画面を見て、真由は思わず叫んだ。

現れたのは、逆海老に縛られてバイブで責められている、若い女性を描いた絵だった。
その女性は若いころの母の美有希だと、真由は直感的に確信した。

(ママ、すっごくきれい!それに、こんな格好なのに、すっごく幸せそうな顔をしてる)

真由はしばらくの間、うっとりとして絵の画像ながめ、湧き上がってくる感動に浸っていたが、やがて絵に書き入れられているサインに目を留め、
「あっ、このサインは…」
と声を上げた。
真由には、そのサインに見覚えがあったのだ。

頭の中で、ついさっき浮かんだ数々の疑問のうち、いくつかが氷解していった。
そしてそのとき、真由はある決心をした。




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