完・決-6
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それから、俺は後を振り返らず全力で走り続けた。
とにかく夢中だったので、森から無事に出られたのに気付いたのは、呼吸がある程度戻ってからだった。
今座り込んでいる場所は、いつも使っている駐車場がある出口だ。
「お兄ちゃん・・・」
「・・・フィア、俺たち助かったんだよな?」
「多分・・・壁、無かったし、出られたと思う・・・」
フィアもまだ、自分がどこにいるのか分からないらしく混乱している。
全然振り返らずに必死に逃げてきたけど、壁が無くなったって事は、あの化け物は死んだのかな。
一瞬だけ確認出来たけど、地面に落ちてたから多分・・・
とにかく立ち上がろうとした時、こちらに走ってくる人影が見えた。
「ドライ?!フィア?!大丈夫か、お前達!」
「・・・・・・父ちゃん?何でここに・・・」
「パパーーーーー!!」
フィアがその人影、いや父ちゃんに抱きついた。
少し後ろに母ちゃんがいて、ハンカチで目もとを押さえている。
間違いない、ここは森の外だ。俺達は無事に帰ってきたんだな。
・・・・良かった。
フィアを守る事が出来たぞ。父ちゃん・・・にも、母ちゃんにも、また会えたんだ・・・・
「心配だったのよずっと。霧が出てから森に入れなくなっちゃって、周りに人が誰もいなくて」
外からも入れなかったんだ。
でも、ずっと父ちゃん達は待っててくれたんだな。
「ごめん・・・店、休ませちゃって」
「いいんだよそんなのは。それより、怪我は無・・・」
父ちゃんは俺の防寒具の両袖にべっとり付着した紫の液体を見て、言葉を飲んだ。
「あっ、これ?気にしないでくれ。変な色の木の実開けたら、中身が飛び出してきたんだ」
「・・・そうか。怪我してないならいいんだ」
父ちゃん達に会えたせいか、今まで蓄積された疲労が一気に襲い掛かってきた。
立ち上がろうとしても膝が震えて上手く立てない。
「大丈夫、ドライ?」
「うん、平気。ちょっと疲れただけさ」
母ちゃんが肩を貸そうとしてくれたけど、流石にもうそんな歳でもないから遠慮した。
なんとか車の中までは戻れそうなくらい、体力は残っている。
俺達が生きて戻れたのはきっと、死ねない理由があったからだ。
父ちゃんも時々死ねない理由として、家族がいるからだと口にする事がある。
その気持ち、今なら分かるよ。ちょっとだけな・・・・
ここにいられるのは奇跡だ。
あの時、化け物の手が俺の心臓を抉っていたら・・・
だから、本当にここに帰ってこられて良かったと思う−