完・決-2
「出て来い、化け物!」
声を張り上げると、フィアが俺の手を握った。
生きて森を出る。
フィアを必ず助ける。
この2つを一度に叶える方法は無いのだろうか?
『やっと無駄な抵抗は諦めたのか、ガキ共』
振り向くと、青いお化けが浮かんでいた。
いつも出るたびに、にやにや笑いやがって。
こっちを馬鹿にしてるみたいで不愉快な野郎だ。
何度見てもこの大きな目は苦手だ、体のわりに大きすぎて気味が悪い。
『さあ、お前か後ろの奴か、どっちが喰われたい?』
「その前に質問に答えろ。1人喰ったら、あとの方は森から出してくれるのか?」
『そのつもりだと言ったはずだよ。お前が信じてないだけだ』
もう・・・こいつの誘いに乗るしかないのか。
たった1人だけで逃がすなんて、そんな都合のいい話があるとは思えない。
だけど、決めた。
フィアを助ける為には他に方法が無い。
「俺を、喰え」
「お兄ちゃん?!何言ってるの、ダメだよ!」
『ふふん。遂に観念したかい。じゃあ早速』
口を開いて、氷柱の様に生え揃った歯を剥き出しにしてきた。
覚悟したつもりだが、あれで噛み砕かれるのか、と思うと足が震え始めた。
ついさっきまで憎らしく笑っていた顔も、目元や口の端が残忍に歪んでいる。
今まで隠していた本性を見せる様になったのか。
化け物が俺に向かい、飛び掛かって・・・
「ダメぇぇっ!お兄ちゃんを食べないでぇぇぇっ!」
「ふぃ、フィア!いけない、前に出るな、やめろ!」
フィアをくれてやるやけにはいかない。喰うなら俺を喰え、この化け物。
前に出ようとしたフィアを両手を広げて制止し、我が身を化け物に差し出した。
(・・・うわ・・・っ!)
目の前が真っ暗になると同時に、周りの音が聞こえなくなった−