Purple ecstasy-23
示されていた第4乗り場はすぐに確認できた。
そこには1隻のヨット以外他の船の姿が全く見当たらない。
そのヨットが係留されている桟橋には、
ラグナの方をじっと見つめながら立っている見慣れた女性の姿があった。
髪型や水着、サングラスにサンダルといった出で立ちは昨日のものと同じ。
唯一違うといえば、
水着の上から夏仕様・波模様のアロハシャツを着ていることである。
知らず知らずにルールーの虜になっているラグナにとっては、彼女のそうした変化にも新鮮さを覚えた。
ラグナがルールーの目の前まで歩み寄っていくと、
彼女は肩をすくめて冗談混じりに笑った。
「時間には間に合ったみたいね。てっきり寝過ごすか、メッセージカードに気づかないんじゃないかと思ってたんだけど」
「あんな“刺激的な"メッセージを残されたら、来ないわけにはいかないだろう?
ましてや時間に遅れるなんていうのはありえない」
「ありがとう。そう言ってもらえると、貴方とのことが昨晩限りじゃないことが分かって嬉しいわ。
・・・・今日ここに誘ったのは、貴方の限られた休暇のためにヨットで海に出たかったから」
「・・・・・」
ラグナは改めて目の前にある、ルールーが用意した大型ヨットを見上げた。
大きな船体と通常のものより太い帆柱に白い塗装が施され
デッキには大人5〜6人が大の字でも寝ることのできる広さが確保されており、
デッキから船内に梯子で降りれば、小さいが冷蔵庫も備え付け、釣りや泳ぎを楽しむための資材も一通り揃えてある。
1日海で楽しむには十分な備えだといえよう。
「沖にでれば、島を海から見ることもできるし、
何より誰にも邪魔されることなく“昨晩の続き"もできるでしょう?」
自分の気持ちが完全に見透かされているようで、
ラグナ自身驚いていた。
今までどんな女を相手にしても、主導権はこちらが握っていたのに。
今は完全にこの女に夢中になってしまってる。
本当に私らしくない。
でも、こういうのも悪くない――――
先に立ってヨットのデッキに乗り込もうとしているルールーの背姿を見つめながら、ラグナは肩をすくめていた。
―――やがてヨットは白い帆を上げて、ゆっくりと桟橋を離れる。
ルールーが巧みに舵を操り、
ヨットは海に浮かぶ他のヨットの間をすり抜けて大海原に乗り出していった――――――