Purple ecstasy-2
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『―――当機はこれよりビサイド空港に着陸します。衝撃に備え、皆様シートベルトを・・・』
「・・・・・」
機内に流れるアナウンスを聞きながら、男は目線を下げることなく腰の位置にあるシートベルトを確認し
何気に窓の向こうに広がる情景に目をやった。
――――キイィィ・・・ン
高度を下げていく飛行機の周囲から白い雲が消え去っていき、
眼下に広がる青い海の中に1個の島が浮かんでいる。
高度が低くなるに従って、心なしか汗ばんできたような気がする。
「暑いな・・・・」
男はハンカチで首回りを拭うと、目的地であるビサイド島の休暇に思いを馳せつつ、椅子の背もたれに身体を預けた。
“ビサイド島"―――
人口約1000人足らずの小さな島。
南の海に浮かぶ群島の中の1つだが、近年リゾートとして開発しようという動きの中にある。青い海と白い砂浜、豊かな緑という代名詞がそのまま当てはまる場所。
男が2泊3日という限られた時間を過ごす島である――――
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―――ガヤガヤガヤ・・・
―――ザワザワザワ・・・・
男が空港ロビーに足を踏み入れた時、
あたりは乗降客と見送り出迎えの人間・異種族でごったがえしていた。
「フリッツの試合頑張って、ケガしないでね!!」
「ルーに隠れて浮気するなよ!!!」
「するか!!俺は愛妻家なんだぞ。ルー一筋なんだからな」
自分が飛行機から降りるのと入れ違いに、
別の飛行機に乗り込もうとする人間とそれを見送る人垣から聞こえてくる声に、男は何気にそちらの方に視線を走らせる。