Purple ecstasy-12
カウンターに向かってゆっくりと歩いてくる彼女の姿に気づいた何人かの客の口から、驚きと羨望のため息が漏れる。
目の前にいるルールーの装いは昼間のものとはまた違い、
大人の魅力をより一層引き立たせるものだった。
長い黒髪を頭の後ろで綺麗にまとめあげ、独特の形状をした櫛やかんざしで飾っている。
両耳と首にはそれぞれ小さな真珠のイヤリングとネックレスがつけられていた。
顔にはうっすら化粧を施し、
唇にはより濃いめの紫の口紅が塗られている。
くっきりとしたラインを浮き立たせるドレスも、水着同様紫一色の生地だが、太もも付近と胸元には切れ込みが入れられていて、
彼女の白い胸と太ももが歩く度にチラチラと見えるのが刺激的ではある。
唯一昼間と違うところは、薬指にはめられていた結婚指輪が外されているということ。
そんなことを考えながらルールーの動きを目で追っていたラグナを尻目に、
彼女はラグナの傍らの席に腰を下ろすとカウンター越しに老人に微笑みかけた。
「こんばんは、この人と同じものを」
「今夜は今までになくお綺麗ですな。新婚のワッカさんがいないからって、おめかししすぎでは?」
「たまには、こういうのも悪くないでしょう?」
「ま、わしはルーさんのそんな格好見られるならこれ以上細かいことは言いませんがね」
ここで初めて、ルールーは意味ありげに笑った老人から真横に座るに顔を向けた。
「ホテルのフロントに聞いたら、貴方がここにいると教えてくれたので・・・。
今夜中にどうしても昼間のお礼をと」
「そんなに大したことをしたつもりではないんだが・・・・・まぁ、貴女が来てくれたお陰で“島で1、2を争う美女"の魅力を再確認できたからいいか」
「まあ、お上手ね」
「いや、ありのままの事実だから」
ここで2人の前にマティーニのグラスが2つ差し出された。