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スージの森
【家族 その他小説】

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3・探-4

「帰ったらお兄ちゃんは何したい?」
「パン焼く」
「いつもそればっかりだね」
「父ちゃんにまだ旨いと言わせてない。それまでは続けるよ」
「私はお兄ちゃんのパン、美味しいから好きだよ」
「ん、そうか?悪いな、誉められるのは慣れてないから、どういう顔していいか分からない」

フィアのやつ、俺の焼いたパンを食ってたのか。
最近は数多く焼かないけど、最初のうちはちょっと余るくらい焼いてたから、その時に食ってたのかもしれない。

「お父さんあんまり怒らないけど頭固いからね。素直にお兄ちゃんを認めたくないんだよ」

お前は、まるで母ちゃんみたいな事を言って。
丁度出口に到着したので、言われたのを誤魔化すみたいに先に進んだ。

「よし、じゃあいくぞ。ここが駄目でもまだあとひとつあるから心配するな」
「確かめる前から言わないでよ、そういうこと。なんか嫌だなぁ・・・」

フィアの手を握りながら、一歩ずつ近付いていく。
頼む、無事に森から出られます様に。これで終わりに・・・


しかし、やはり先程と同じく足の爪先にぶつかり、緑の波紋が広がった。
ここも駄目だったか・・・いや、まだひとつある。落ち込むには早い。


最後のひとつは十字型の上、下にあるここと反対側の場所。

本当は、もう歩くのは辛いし、これ以上進むのは嫌だった。
でも閉じ込められてあんな化け物にまんまと喰われてしまうのは、もっと嫌だった。
せっかくフィアもいつもの元気を取り戻してくれたんだし、入れ替わる様に俺がへこんでしまっては駄目だな。

「行くか、次に」
「うん。そうしようか、お兄ちゃん」

握り返してくるフィアの手に力が込められている。
こいつも、ようやく頑張ろうって気になったか。まさかフィアに励まされるなんてな。

「ちょっと疲れてきてるね、お兄ちゃん。休む?」
「いいや、平気だ。別に疲れてないぞ」

・・・俺、顔に出てるか?
ずっと気を張ってるってのは流石にしんどいけど、まだまだ限界には遠いぞ。
でも、フィアも明るさが戻ってきたんだから、もう少し落ち着いてみてもいい頃だろうか。

それは父ちゃんと母ちゃんの顔を見てからでも遅くないかな。
まだ森を出るまでは安心できないし、化け物が居なくなってからじゃないと笑うのは嫌だ。

あいつは怖いし、怒りも感じてるけれど、どうせなら笑ってこのスージの森から出たい。



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