3・探-2
「出るよ」
「・・・もし、出られなかったらどうするの?」
「出るって、そう出来るって信じればいいんだ」
「でも・・・あのお化け、森からは逃げられないって言ってたよ・・・」
まあ、あれだ。
いくら妹が好きなお兄ちゃんであっても、時に話すのが面倒になる事もある。
返事もせずにフィアを立たせて、寝ていた時に崩れた帽子やマフラー、手袋を直してやった。
「行こうぜ、希望を探しに・・・なんてな。ちょっとカッコつけすぎか?」
「・・・・・・」
何かいえよ、フィア。
空回りしてしまったお兄ちゃんを笑えばいいよ、お前なんて。
・・・・いけない、冷静にならなくちゃ。俺まで気持ちが揺らいでしまったら、誰がフィアを守るんだ?
「腹減ってないか、フィア。ちょっとでも食っといた方がいいかもしれないぞ」
「昨日全部食べちゃった」
「あるよ、まだ」
リュックから弁当を取り出して、フィアに手渡した。
「これ、お兄ちゃんのでしょ。駄目だよ、食べたら・・・」
断ろうとしたフィアの腹が大きな音を鳴らした。
昨日と変わらず逞しくて何よりだ。俺は不安で、あまり空腹を感じていないけど。
だから俺の分まで食ってくれ。受け付けないんだよ・・・胃袋が拒否してる。
「じゃあいただきます」
もう少し遠慮するかと思っていたが、俺の許可を得たらあっさり包みを開けてしまった。
何だかおかしいな。
今にも泣き出しそうなくせにしっかり食うフィアと、普段と変わらない様にしている俺は空腹を忘れている。
腹が減ったと胃袋に伝える余裕が無いのだ。
「旨いか?」
サンドイッチを頬張りながらこくん、と頷くフィア。
俺はいいんだ。お前の空腹が満たされれば、俺も満足できる。
まずは一つ目の出口を確かめてみる事にした。
出口は全部で4つあり、案内図にも記されている。森を上から見てそれぞれの出口を線で結ぶと十字型になるのだ。
いつも使う所は十字の左、だったはずだから、あとの3つを確認してみよう。
またあの、透明な壁が無ければいいんだけど・・・ちゃんと出口が見えるのに進めないなんて嫌だぜ。
フィアが食い終わるのを待ってから、目的地を目指して歩き始めた。
さあ楽しいピクニックの始まりだ。まさか2日も続けてやるとは思わなかったけどな。
足取りは軽い。昨日はかなりこたえた寒さも、今日は別になんてことは無かった。