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「Wing」
【ファンタジー その他小説】

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「Wing」-8

第三章〜空〜




夕日が街全体を包み込んで、水溜まりが朱く輝く。まるで太陽と一つに混ざり合うように。道端の草木が風に吹かれ葉を揺らす。まるで、沈み行く太陽に手を振り、別れを惜しむかのように……そんな何処か哀愁漂う景色の中をゆっくりと歩く人影達。
「綺麗だねぇ……」
「そうだな……」
「……」
「……」
二人は街を出て少し歩き、小高い丘まで来ていた。そこへ腰を下ろして一日の終わりを告げる太陽に照らされる街をじっと見つめていた。少女がふと、少年の顔を見る。太陽に照らされてほんのり紅く見えるが碧い瞳だけはなぜか、なおさら青く輝いて見えた。





日が完全に沈み一日の終わりを告げる。これ以上、何もする事が無いので、帰ろうとした時、
「……待ってくれ……」
座ったままのレオンに声をかけられた。びっくりした……だって彼が呼び止めてくるなんて…………
「もう少しだけ、待っててくれ……」
何故かは分からないけど、嬉しい事に変わりは無い。レオンの隣に座って待つ事二時間――





「うわあ……」
深く暗い闇に輝く光の群れ。あまりの多さにめまいがするくらい。
「夕日が綺麗な時はいつもこうなんだ……」
満天の星空を見上げて彼は言う。あまり変化は見えないが、若干微笑んでるようにも見える。
その横顔を見た時、心臓が強く鳴った。大きく強く鳴った。





「なんで街が嫌いなの?」
暫く星を眺めていると女が話し掛けてきた。 「こんな格好をしているせいで、変な目で見られるからな……あまり気のいい物じゃない……」
ひとつ間を置いて続ける。
「……それに昔、色々あったんでな…………あんたは……何であんな所に?」
「えっとね……森でウサギを見つけてね、それで追い掛けてたら………」
「……ふっ…………」
「笑うなんてひどい!」「……悪いな……」
声を殺して喉の奥で笑う。笑ったのは久しぶりだな。
その後もイロイロ話し合った。どうでもいいような事――
「翼人って知ってる?」
「……果ての地の?」
「あの話、レオンは信じる?」
「どうだか、な……」
「私は信じたいな……空、飛べるって羨ましいなぁ」
「そうか……」

――お互いの事も。どうやら彼女は城に住んでるらしい。召使いか何かだろう。自分の事も全てでは無いが話した―放浪生活が長い事、その間にあった様々な事。





東の空が白ずんできた。星達も少しずつ光を弱め、闇に帰って行く。もう夜が開けようとしている。立ち上がり去ろうとすると、彼女が聞いてきた。
「お城に来ない?」
「何故……?」
「家ないんでしょ? 迷惑?」
「そんなことないが……いいのか?」
「うん。だって自分ちだもん」
「…………は?」
「言わなかったっけ? お城に住んでるって」
「いや……言ってたが……」
まさか王女とは……
「来る?」
「ああ……」
「それじゃあ行こう!」
そうして先日から実に三回目となる街への道程を行く。


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