投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「Wing」
【ファンタジー その他小説】

「Wing」の最初へ 「Wing」 15 「Wing」 17 「Wing」の最後へ

「Wing」-16

少し落ち着いてから、クレアに聞かせたのと同じ話をした。皆、沈んだ顔をしている。
「……やった事は償います。でも……」
「もうよい……」
王が諭すような声で言う。
「だがお主のおかげで一つの隊が潰されてしまった。さらに先日、隣国が侵略されている。近年、国々での間で戦が増えているからな。恐らくこの国もそのうち……」
何を言ってるんだ?悪い予感がする……
「そこで、我が国の兵士として戦ってもらいたいのだが……」
やっぱり……悪い予感というのは兎に角よく当たる。
「幸いお主の武力は潰した隊に匹敵している」
断れないよな……
「わかりました……」
「そう言ってくれると思っていた。ではまず、この国の軍力についての説明を聞いてもらおう」
「では私の方から説明を……」
五十歳はゆうに越えてるであろう、太った男が説明に入る。
「えー、我が国の総兵力は歩兵隊百二十部隊、騎馬隊三十部隊、弓矢隊五部隊、投石隊五部隊、一つの部隊につき約百名、投石隊のみ一部隊十名、計一万五千五百三十七名からなっております。レオン殿は第二歩兵部隊の隊長カイザ殿、副隊長のノーヴ殿と共に第一歩兵部隊の方へ配属と、」
「……ちょっと待ってくれ……」
言葉を遮り、
「……俺は独りでいい……」
言葉を続ける。再び場内がざわつく。
「静かに!!」
王が一度喧騒を沈め、それから問い掛ける。
「何故?」
「俺が入ると兵の士気が下がるでしょうし……それに俺も独りの方が動きやすい……」
「承知した。ならば主は独り、という事で」
「ありがとう、ございます……」
「我等は何をすればよい?」
「全員に伝えといて下さい。俺の近くに寄るな、と……」
「どういう意味だ?」
「とにかくお願いします。それではこれで……」


「本当にあの者を信用しても宜しいのでしょうか?」
「今は戦力になるなら何でもよい。それに……」
「それに? 何ですか?」
「気にするな。議事はこれで終了する。皆の者、もう散ってよいぞ」
言い残し、一番に席を立つ。続いて他の者も次々と議場を後にする。

皆が出て行ったのと入れ違いで、騒々しい足音が入って来た。
「すいません! 遅れました! これには深い訳が……って、アレ?」
この間抜けが誰なのか、皆様はお分かりでしょう。





「何で?」
「何でって言われてもな……」
「どうして?」
「……」
それだけで室内の温度が三度は下がる程の盛大なため息をつく。
「……俺にも責任が有るからな……」
「レオンは悪く無いから……責任とか考えなくていいからさ……」
「……」
「ホントはレオンも行きたくないよね?」
……さっきから何だ?遠回しに色々と……
「何が言いたい……」
「あのね、初めてレオンに会った時、襲われそうなトコ、助けてもらったよね。その時はさ、かっこいいなって思ったんだ。でも、昨日のレオン見た時、すごく恐かったの……なにもかも全部壊してしまいそうで……レオンには戦って欲しくないの。だって戦っている時のレオンすごく恐いから……だからさ、行くのは止めよ? ね?」
「……」

その時は返事もせずに話を終わらせた。夜寝るのに女の部屋に泊まるのはかなりまずいので(既に一度、寝てしまっているが)空いてる兵舎で寝ることにした。


「Wing」の最初へ 「Wing」 15 「Wing」 17 「Wing」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前