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スージの森
【家族 その他小説】

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1・霧-3

〜〜〜〜〜


朝早く起きて弁当作るのを手伝い、車に乗り込んだ。

「フィア、寝るな。もうすぐつくぞ」
「だってまだ眠いんだもん・・・お兄ちゃん、私より早起きしたのに眠くないの?」
「別に。言い出したお前が居眠りすんなよ」

俺とフィアの会話を聞いて、母ちゃんがくすくす笑っている。
こういうところ、俺達がまだちっちゃい時から変わってないな。
俺は子供だから分からないんだけど、母ちゃんはこんなやりとりも聞いてるとおかしいものなんだろうか。

山道を走る車から見る景色は、とても寂しい。どの木も見渡す限り葉っぱが抜け落ちていて、その心許ない姿はまるで寒さに震えてる様にも見えた。
冬のピクニックなんて初めてだ。ちゃんと楽しめるといいな。


「うっ、うわっ!」


車から降りると容赦なく風が吹き付けてきた。
帽子やマフラー、手袋をして防寒対策は完璧なつもりだったが、森の寒さはそれを更に上回るらしい。

「なあ、フィア。やっぱりやめようか、この寒さはまずいぞ」
「私は大丈夫だよお兄ちゃん。ちょっと歩けばあったかくなるよ、いこ」
「お、おい」

手を握られるのはちょっと恥ずかしい。
友達や知ってる人がいなくて良かった。14歳にもなって妹と手を繋いでるのを見られたら、絶対バカにされるからな。

「あんまり遠くに行っちゃダメよ、ドライ、フィア」

母ちゃんは注意したけど、やっぱり笑っていた。多分、俺達は迷わないと思ってるんだろう。
実際そうだ。子供の頃からの遊び場なんだし、隅から隅まで知り尽くしているつもりだ。

「おい、霧が出たら危ないぞ。だからあまり遠くに行くな」

父ちゃんが珍しく注意してきた。
前もスージの森に遊びに行った時、何度か言われた気がする。
俺はまだ一度も霧が出たのを見た事が無いんだけど、物凄く濃いのが出るらしい。
手を伸ばした距離の先すらも見えなくなってしまうから、あまり深い所に行くなと注意された。

そういや、最近は誰も口にしなくなったけど、霧に隠れてお化けが出るという噂もあった。
一体誰からどうやって聞いたのかは覚えていない。
初めて聞いた時は訳もなく怯えたりはしたけれど、霧が濃いならお化けだってよく見えなくて動けないはずだよな。
噂なんてそんなものだろう。目に見える根拠やはっきりした証拠なんて無い。

寧ろ、会ってみたいな。お化けとやらがどんな顔してるのか見たい。



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