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スージの森
【家族 その他小説】

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1・霧-4

「川がカチカチになってるね、お兄ちゃん」


橋の途中でフィアがしゃがみ、凍った川を見下ろしている。
場所によっては深く、流れも早くて夏には最高の遊び場だ。
でも今はフィアの言葉通り、完全に固まっていた。
まるで、水と一緒に時間も凍ってるみたいだ。

ここに来るまでの間景色をずっと眺めてたけど、眠っているみたいに静かだった。
森も冬眠するのかな。だとしたら、生き物と同じなんだ。

「お魚さん達いないね。どこに行っちゃったんだろう」
「川を泳いで安全な場所に行ったんじゃないかな。ここにいたら凍っちゃうから」
「その場所ってどこ?」
「難しい質問だな。例えば・・・池、とか」
「池だって凍るよ」

笑われたのが悔しかったのでフィアの肩をちょっと押した。
あまり強く押したら落ちちゃうから、牽制で軽くやった。
魚がどこに行くのかなんて分かるわけ無い。でも、分からないと答えるのは恥ずかしかった。

冬のピクニックも意外と楽しめるんだな。
本当はパンを焼きたかったけど、こうして妹と2人だけで遊ぶのも悪くないかもしれない。

・・・ん?2人だけ・・・?

「父ちゃんと母ちゃんどこだろう」
「・・・いないね、そういえば。どこだろうね」

どうやら歩くのに夢中でフィアも気にしてなかったらしい。
迷っちゃダメだと言ってた母ちゃんの話を聞いてなかったのか?
それは俺も同じなんだけど・・・・

「戻った方がいいだろうな。勝手にここまで来ちゃったし」
「ううん、大丈夫。別に怒らないと思うよ、私達もう子供じゃないんだし」

中学生になれば子供じゃない、と言いたいのか。お前は来年までまだ小学生だけどね。
怒られるのが怖いんじゃなくて後で面倒なんだよな。遊びに行ったのに注意されるのは嫌だ。

「もうちょい進むか、フィア」
「もっと先に行こうよ、お兄ちゃん」

俺を引っ張って更に先に進んでいくフィア。たかが歩くのがそんなに楽しいのか?
でも、仕方ないな。お前が喜んでるならもうちょっと付き合ってやってもいいぞ。
店の手伝いの毎日だからな、こういう時に思い切り遊んで羽根を伸ばして欲しい。
生意気だけど、やっぱり可愛い妹なんだ。

気が早いかもしれないが今日は来て良かったな。
楽しい1日になりそうな予感がする。
寂しい風景も、気の持ち様によっては綺麗に見えたりするんだな。


さっきまでよく見えていた周りの景色が、少し見づらくなった様な気がした。
フィアは気付いている素振りは無いので、俺の気のせいだといいんだが・・・


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