EP.FINAL「良かったよ。当たり前じゃん」-2
「?!」
いきなり姉ちゃんがドアを開けて入ってきた。
「行くぞ、信之介」
「ど、どこにだよ?!」
「思い出作りだ」
という事はまたあの公園か。
そういえば去年の今頃もそうだったな。
まさかあの時は、姉ちゃんを好きになるどころかとんでもない事をしでかす羽目になるなんて、夢にも思わなかった。
無理矢理引っ張られ、俺は冬の早朝から外に放り出されてしまった。
薄着に包まれた体を容赦なく凍てつく風が吹き付けてくる。
「置いてくぞー、信之介」
「ちょっと待てよ!」
さっさと自転車に飛び乗った姉ちゃんを慌てて追い掛けた。
畜生、去年と同じじゃねえか。どうせまた見失わない様にするのが精一杯なスピードで走るつもりだろう。
(あれ、助走がやけに長いな)
しかし姉ちゃんはゆったりと自転車を走らせていた。
並んで会話すると丁度いい速度で進んでいる。
置いていくんじゃなかったのか、姉ちゃん。どういうつもりだろう。
いや、こうして油断させといて急発進するつもりかもしれない。
「お前さ、後悔してんだろ」
「姉ちゃん今日はやけに遅いけど・・・え?」
「姉ちゃんとエッチした事」
「いや、その。いきなり何の話だよ」
姉ちゃんは前を見たまま、こちらに目線を寄越さなかった。
笑ってなくて、でも怒ってもいなくて、珍しく無表情に近い顔をしている。
「お前は昔からそう。散々考えた挙げ句、やって後悔する」
「知ったふうな口きくなよ。姉ちゃんに何が分かるんだ」
「私があまり考えずに行動するの知ってんでしょ。それと同じ」
「・・・・・・・・・」
何が言いたいんだ、姉ちゃん。俺を咎めているのか。
終わった後確かに言ってた、普通の姉弟に戻ろうって。
姉ちゃんはそれだけ言うと、後は一切口を開かなかった。
公園に着くまでの間、ずっと並んで走ってたけど、俺に声をかけてくる事は無かった。
公園に着くと姉ちゃんは自転車を止めて歩きだした。こんな所で一体何をするつもりなんだ。