イート・ミー!-12
そして、そこで俺を待っていたのは、思いがけない光景。
「栄助遅い〜!」
「どうしたんだよ、先に来てるはずじゃなかったのか?」
「何にせよよかったね、錦ちゃん」
既にハンバーガーやポテトが載ったトレイの並ぶ友人等のテーブルの真ん中。錦の姿が、そこにあった。
「……錦」
「栄ちゃん、頼んできなよ。錦もシェイク飲みたい!」
戸惑う俺に対し、錦はいつも通りの錦だった。へら、と笑いながら勝手なことを言って、友人のポテトを摘む。
「久しぶりだよね、本当。やっと仲直りしたの?」
「栄助の奴、ずっと不機嫌だったんだよ〜」
言う富士を、俺は睨みつけた。錦は目を瞬かせて俺を見つめた後、嬉しげににこっと笑う。
三週間前となんら変わらないこの光景に、俺は若干戸惑いを隠せない。
口の中に残る甘酸っぱいガムの味。その唾を飲み込む俺は、錦の桜色の唇から視線を外すことができない。
「で、話は変わるけど。夕張は結局どうすんの?」
「別に、メールするくらいならいいけど」
「あ、聞いてよ栄助〜! さっきの呼び出し、俺じゃなくて夕張だった……て、栄助?」
俺は気づけば錦の腕を掴んでいた。
「栄ちゃん?」
首を傾げる錦を立たせ、強引に手を引いた。
「ちょ、栄ちゃん! あ、ごちそうさまでしたっ」
慌てて鞄を持ち、錦は歩きながらぺこりと友人等に挨拶をする。
じゃあね、なんて軽い三人の声が背後から聞こえた。
「……月曜日、二人が足腰立たなくなってるに1000円」
「だめ〜、それじゃ賭けになんない」
「同意見」
そんな友人等の声は、今回ばかりは無視した。
それからどうやって自分の家に帰ったか、よく覚えていない。
気づけば自分の家まで錦の腕を引っ張っていて。玄関で靴を脱ぎっぱなしにして、冷蔵庫から2リットルペットボトルのミネラルウォーターを掴むと、二階の自分の部屋まで上がった。
扉を閉めて鍵をかける。性急に錦の唇を奪い、縺れ合うようにベッドに傾れ込んだ。今度は、本物の唇だ。柔らかさと甘酸っぱい匂いに満たされる。
「どうしてあそこにいた」
「どうしてって」
疑問符を浮かべる錦。俺の問いが、なぜハンバーガーショップにいたのかということに合点がいくと、にこりといつものようにいつもの調子で答えた。
「栄ちゃんとしよーと思って」
「………」
ってことは、何だ、彼氏とは別れたということなのか?
キスして押し倒しておいてなんだが、俺はその言葉に鼻白む。
それならば、
「……後悔しねぇな?」
容赦しない、と恫喝するように低い声で言ってやると、錦は指を咥えながら潤んだ瞳をこちらに向けた。
手加減なんてしなくていいよ。言葉とともに誘う、錦の瞳。
俺達は再び口づけた。
「ん……は」
口の中に残っていたガムはすっかり味をなくしていた。
俺は一旦唇を離すと、それを嚥下しながらシャツを脱ぐ。その間に錦もリボンを緩めてシャツのボタンを外していた。しかし、脱ぎ切らないうちに俺は錦の唇を奪う。
「んむ……はっ、ちゅ……んんっ……」
舌と歯列を舐め上げ、唇を噛んでやる。リップ音を響かせて、何度も食んだ。
「はっ……ああん、栄ちゃ……」
「すげぇ顔」
快感に溶けた顔はエロいなんてもんじゃない。キスとこいつの顔だけで痛いくらいに張り詰めてしまった俺は眉根を寄せ、ベルトを緩める。
「あ……ぅんっ!」
ブラを外して胸を揉みながら、その先端に口づけた。硬くしこった乳首を噛み、れろれろと舌でなぶる。びくびくと錦の身体が跳ねた。