EP.4「嬉しい事でもあったんだろ」-2
「あの・・・話って、何?」
放課後、隣の席の子を人気の無い場所に呼び出した。
・・・この子しかいない。さあ、言うんだ。
俺は息を一気に肺に取り込む様に強く吸い込んで・・・
「俺と付き合って下さい!」
その子は突然の告白に固まり、まず一回まばたきした。
そして口を開いたままもう一回、今度はさっきよりもやや遅くまばたきをした。
「えっ、ええ?あ、あのっ」
やっぱり、唐突過ぎただろうか。
・・・高梨さんにしてみれば、昨日まで只のクラスメイトだった奴に告白されても、って感じかもしれない。
実際返事に困って立ち尽くしている。
焦りすぎた、かな。
姉ちゃんの事を忘れる為には彼女を作るのが一番だ。
その結論に達して勢いに任せてみた。
・・・だって、そうでしょ?
姉ちゃんは家族なんだ。弟である俺が、どうやったって恋人になんてなれっこない。
それだったらいくら頭を悩ませても仕方ないんだ。
何よりもう姉ちゃんでオナニーなんてしちゃいけない。
待っているが高梨さんは呆然としたまま立ち尽くしていて、口がきけそうな状態では無かった。
・・・こりゃ、脈無しだな。
それどころかいきなりこんな所に連れて来られて、挙げ句は好きですなんて困るだろう。
そう思って、謝ろうとした。
「いっ、いいよ」
「はい?」
すると、フリーズしていた高梨さんが再起動した。
恋人になりましょう、という起動音とともに、ぎこちなくだが作動している。
それに対して、何とも気の抜けたみっともない返事をしてしまった。
本当にいいのか?
そのつもりで告白したとはいえ、こんなにあっさり返事を貰ってもいいのだろうか。
念の為に確認しておこう。
「い、いいの?俺でも」
「うん。あの・・・嬉しい、マジで」
「本当に俺でいいの高梨さん。後悔しない?」
「じゃあなんで告白したの」
あまりにしつこく確認したせいか高梨さんにつっこまれてしまった。
そうだな、そう言われてしまうとこうやって返すしかない。
自分からいっといて迷ってどうするんだ、もっと自信を持たなくては。
これで俺達の間に新しい絆が芽生えた。
「ごめん、びっくりした?」
「うん。あとね、まだ実感無い。さっき教室で呼ばれた時、マンガ貸してって言われるのかと思った」
言葉通りには言わず、一応大事な話がある、と匂わせる様には伝えたんだけど・・・
あんまり深く考えないところあるしな、この人。
・・・それは少なくとも今の俺が言うのはおかしいか。