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熱帯夜
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それから-5

*****


薬を飲んで半日寝たら夕方にはほぼ平熱まで下がってくれて小腹が空くほど回復できた。
良かった、この調子なら明日は出勤できそう。
起き上がってキッチンに行って冷蔵庫を物色。ゼリーかヨーグルトないかな…

『ピンポーン』

インターホンが鳴ったから手に取ったゼリーを冷蔵庫に戻すと、小さく鳴いたお腹をそっと摩って玄関に出た。

「書き留めです。サインお願いします」

郵便屋さんがいて、言われるままサインをした。
書き留めを受け取って玄関を閉めようとした瞬間、

「秀徳」

聞こえてきた声に、心臓が止まりそうになった。

…秀徳?
隣の家から聞こえた。
秀君の名前――…

「なんだよ」

後を追うように聞こえた、秀君の声。
だけど、まさか…

「遊びじゃなかったの?」

ここからじゃ顔は見えないけど会話がはっきり聞こえる。

「なにが」

間違いない、秀君の声だ。

「浴衣のお姉さん」

音をたてないように、姿が見える位置にゆっくりと移動した。

「俺が新しい彼女かって聞いた時、狙ってるだけって言ってたじゃん」
「あ―…」

隣の家のエントランスにいたのは、…高校生?
二人とも顔は見えないけど、あの制服は近所の高校のものだ。

高校生…
なんで隣の家に高校生がいるの?

「マジだったんだ」

一人の子の顔が生け垣の隙間から一瞬見えた。
あの子、お祭りで声をかけてきた子だ…

心臓の辺りをギュッと掴んだ。
嫌な予感がした。
痛い。
怖い。
このまま家に入れば何も知らなくて済むのに、答えが知りたかった。

『浴衣のお姉さん』
『遊びじゃなかったの?』
『狙ってるって』
『マジだったんだ』

もう一人の子の答えは――…

「そんなわけないだろ」

完全否定。

違うよね?
秀君じゃないよね?
名前が一緒なだけ。
声が似てるだけ。
違うって言って…

携帯を開いて、震える指で恐る恐る秀君の携帯に電話をした。


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