EP.2「夏休みっていつ？」-2
俺と園田は完璧にミッションを遂行した。
急に思い立ったわりにはぴったり息が合っていたし、見付からない様に接近したのも見事だったはずだ。
だが、たったひとつ過ちを犯してしまった。
目黒の足が速かったのは計算外だったのだ。
「おらっ！」
「ひぃぃー！」「寮母さん助けて、この人変態です！」
「お前等が先にやったんだろうが！」
目黒に脱がされ、仲良くパンツを晒す羽目になってしまった。
なんだか周りの笑い声も、今の方が大きい様な気がしてならない。
気のせいか？だったらいいんだけど、別に。
園田が呼んだせいで本当に寮母さんが来てしまい、３人とも怒られてしまう。
「全く、お前ら何が楽しいんだ、男のズボンなんか脱がして」
「厳しい寮生活だからな、たまには笑いが必要なのさ」
「次やったら回し蹴りな、分かったかこのバカコンビが」
「へいへい、分かりましたよ目黒くん」
でも、目黒は本気で怒ってはいない。
仲良くなれば互いに悪戯をする様にはなるけど、やっぱり越えちゃいけない範囲があると思う。
・・・それは、友達同士では当たり前だが、姉弟の間でもそうだろう。
姉ちゃんは相手が友達だった場合、確実に怒らせる様な悪戯ばかりしてた。
まさか俺にやらかしてた様な度が過ぎたものを、友達にはやってないよな？
「あっ、もうそろそろ時間だぜ。今日は確か３階だったよな？」
「船木は何処だ」
いつも４人で固まって教室に行くんだけど、船木はぎりぎりまでラウンジにいる。
ちょっと時間にルーズなところがある。最初の頃よりは大分治ってきたけど。
見回すとソファーに座り、コーヒー牛乳をがぶ飲みしている船木を見付けた。
「おい、もう行くぞ。さっさと飲んじゃえよ」
「まだ早くない？１５分もあるじゃん」
「ちょっと余裕もって行こうぜ、ほら早くしろ」
「分かったよー、ったく皆せっかちなんだから」
あんまり慌てないところが船木のいいところだし、こういう時はあまり良くない部分でもある。
さあ、間もなく２０時だ。就寝まであと３時間、もうちょっと頑張れば今日も終わる。
最初は難しい事もやり続けるうちに出来る様になったんだ、だから３年間頑張りたい。
ある日の学校の昼休み、友達の荒谷(あらや)と話していた。
「なあ岡山ってさ、寮生だったよな」
「ああ、そうだよ」
荒谷は通学生で家から通っている。
あまり寮での話はした事が無かったので、聞かれるのは珍しいと思いながら返事した。
「大変らしいな、下校してからも勉強すんだろ。俺は無理、遊びたいし」
「最初は大変だったよ。でも、もう慣れた」
「１週間ずっとそれだろ、遊ぶ時間は無いのか？」
「日曜日は完全に自由時間だよ。あとは・・・土曜日も割りと早く終わる、週末は緩いよ」
規則正しい生活の為、なかなか外出は出来ない。
テレビも寮生が見られるのはラウンジの一台のみだし、ネットルームのパソコンもそんなに数は無いので、情報を得るのは大変だ。
でも携帯の使用に関してはそれ程厳しくないので、そこからネットに繋ぐ事は出来る。