EP.2「夏休みっていつ?」-1
寮生活が始まって2ヶ月と少し過ぎた。
最初のうちはすぐ疲れてしまったり、勉強もノートを取るだけでも精一杯で大変だった。
学校の授業だけでも結構大変なんだけど、寮では20時から22時まで勉強しなくちゃならない。
終わってもまだ就寝ではなく30分後には清掃タイムがあり、ラウンジや階段等を綺麗にするのだ。
そして23時にようやく就寝となる。
スケジュール表を見た時はこんなに早く寝れない、なんて思ってた。
だけど、慣れない生活でみんな倒れこむ様にぐっすり眠っていたのだった。
他にも大変な事は結構あるけど・・・それ以上に、学ぶ事や楽しい事は多い。
「ん?」
風呂上がりでラウンジの張り紙を見ているとごつん、と腕でつつかれた。
「やるぞ、フォーメーションAだ」
振り向くと園田がいた。
いきなりやるといわれても困るな。
「誰をやるんだ」
「今回のターゲットは柱の近くで電話している、目黒忠久だ。完全に油断している今がチャンス、どうする岡山?」
「・・・・・・・・・」
俺は目線で園田にOKの合図を送った。
俺達は最高のコンビなんだ、今回のミッションも必ず成功させてみせる。
「行くぜ、相棒」
「ああ。せーの・・・!」
腰を思い切り屈めて、足音を立てない様にゆっくり目黒に近付いていく。
フォーメーションAは緩急が大事なんだ、相手に見付からない様に行動する部分と、一気に遂行する部分がある。
今は気配を殺すのが大事だ、焦らず確実に・・・平均台を進むがごとく・・・
「ん、これから勉強だよ。お前はちゃんとやってるか?夜にやるのも案外いいぞ」
間抜けな奴だ。俺達に狙われているとも知らずに、呑気に電話なんかして。
声が聞こえる距離まで接近したぞ。よし、今だ!
俺と園田は全く同じタイミングで踏み込み、目黒のスウェットを掴んだ。
「?!」
異変に気付いた目黒が振り返った。だが、時すでに遅し。
俺と園田に2人がかりでスウェットを脱がされ、ピンク色のトランクスを晒していた。
「お、お前ら何やってんだ!」
ミッション成功。
いや、まだだ、無事に逃げ切るまでがミッションだからな。
「やったぜ岡山!」
「おう、園田!」
これで俺達はまたひとつつまらぬ物を脱がしてしまった。
「お前等許さねえ、待ちやがれ!電話の邪魔すんな!」
周りの奴らもこっちを見てゲラゲラ笑っている。
寮生活の掟、それは背中を無闇に向けない事だ。