第二章-1
とある平日の午後……自宅にて。
ボクはまったりと我が家のリビングでくつろいでいたら、
「ご主人様。わたし、フェラチオがしたいです」
あっけにとられた。
今は10月、暑さにやられるには遅い。何があったか……。
そうそう、ボク、天道ヒロユキといきなり爆弾発言を出した、メイドの山吹スミレは恋人となっている。なので、爆弾発言が飛び出しても不思議じゃない。
「……聞きたいんだけど、どうして?」
「ご主人様と私が秘密とはいえ、恋人の関係です。しかもひとつ屋根の下に暮らしていて、今日に関してはふたりきりです。この機会を活かしたいのです」
なるほど、だから唐突にエッチなことを切り出してきたのか。だけど、
「ダメだよ。恋人になったからといって、すぐに性的関係に持っていくのは、ボクはイヤだな」
ボクの考えることはひとつ、早々に性的関係を築いてしまうと、マンネリを早くに招いてしまうかもしれないからだ。惰性はそのうち、破局への道しるべともなりかねない。
「ですが……ご主人様」
スミレはソファーに座っているボクの背後に回り、あの豊満な胸をボクの頭に押し付けて、耳元で甘く、甘く呟く。
「あれだけエッチな本をお持ちになって、興味がないわけないですよね?」
スミレが言っているのは、ボクの所持している、十八禁の成年向けの本のことだ。確かにたくさんある。けど、それとこれとは話が別だ。
一応、ボクはスミレから離れようとするのだが、ぎゅっと抱き締められてしまい離脱も叶わない。
「す、スミレ……これ以上は……」
「これ以上は……なんですか?」
すると、スミレの手はボクのペニスに伸びてきた。モノの確かめるかのように、まさぐる。
「ご主人様の嘘つき。本当はしたいのではないですか。ほらほら、おちんぽおーきくなーれ」
へんな呪文を唱えながら、動かす手を激しくするスミレ。
「ちょっ、スミレやめ……」
「やめませんよ〜。ご主人様は嘘をおつきになりました。ですのでお仕置きです」
お仕置き、その言葉を口にした途端、スミレはボクのジーンズのベルト等をマッハの速度で外していく。どこで覚えた?
そうこうしているうちに、ボクの下半身が丸出しになってしまった。
「ふふふ……相変わらず、皮被りの包茎おちんぽなんですね。そこがまた、初々しくていいですよ……」
ボクのペニスは仮性包茎だ。剥けば亀頭は出る。ただ普段は被ったままなのだ。
「さぁ、どうしましょうか。私からの提案を飲まないご主人様は、ちょっと焦らしつつ攻めさせてもらいましょう」
再び、スミレの手がペニスに伸びてくる……のだが、
「一気にはイカせませんよ。私みたいに、たまには生殺しを味わってください」
ふわり、と亀頭に触れてきた。ただそれだけ。あとは竿の部分をピアノを弾くように、指でとととん、と叩いてくるだけ。性感はあるが、絶頂を迎えるには一日かかりそうな刺激でしかない。
「スミレぇ……」
ボクは思わず切ない声を上げてしまった。事実上の降参宣言。これで、ボクの意見は意味を成さなくなった。
「ご主人様の反応は楽しいですね。これなら一日かけられそうです。ですが……」
不意に、スミレの手はボクのペニスをわしづかみし、ぐいっと皮を下ろしてしまった。そこにスミレが息を吹きかける。
「ああんっ!」
「快感に悶えるご主人様もいいですけど、私はザーメンを浴びるほど飲みたいんですよ」
ついに出た、スミレの本音。スミレは実はザーメンジャンキー。過去幾度となく、ボクの精を吸い尽くしているほど。ボク自身より、ボクのザーメンの方が好きなんじゃないかと思うことも、たまにある。