夏の夜-後編--3
5時を回った頃に扉が静かに開いた。
彼氏さんが帰ってきた。
寝ころんだまま話していたおねーさんが起きあがった。
私もおねーさんについてキッチンへ行った。
「圭さん、おかえりなさい」
「おじゃましてます」
「起きてたの?あ、はじめまして、坂井圭といいます」
小声でぼそぼそと挨拶。
大柄で髪の毛がくせっ毛らしくパサパサとしている。
長めの前髪が垂れていて目ははっきりと見えない。
グレーのスゥェットで、あまりオシャレな感じではない。
でも、口元は笑っていて人が良さそう。
「ハルの彼女の佐野智美ちゃん。ハルは寝てる。ほら、そこの毛布のかたまり」
おねーさんが指さすと、キッチンの隅のかたまりが返事をするように、もそりと動いた。
くすくすと三人で笑った。
おねーさんが手を伸ばし彼氏さんの髪の毛をクシュクシュとなでた。
「お風呂入ってきたの?」
「ん…。久しぶりにね」
まだ少し湿ってるっぽい。
「なにか食べる?それとも寝る?」
「ん?男子禁制の匂いがするから寝るよ」
「ふふ。がーるずとーく、してるの」
おねーさんが笑う。
「智美ちゃん、眠い?」
「いえ、私はもういいかな」
「そう?じゃ、そういうことで。圭さん、そっちの布団で寝ていいよ。ごゆっくり。おやすみなさい」
「おやすみー」
彼氏さんは大きな手を振って、私たちが寝ていた部屋に入っていった。