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夏の夜
【初恋 恋愛小説】

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夏の夜-後編--2

「かっこいい?アレが?確かに学校はちょっとイイトコに行ってるけど。……かっこいい?あいつ、運動とかはペケな筈で…」
「運動とかはいいんです。別に。結構人気あったんですよ、バレンタインとかいっぱいチョコもらってたみたいだし」
「あら?そういえばそんな気もするね」

おねーさんは上の方を見ながら、なにか思い出したらしく、何個かくれたなあ、と言いながら舌をペロリと出した。

「そうでしょう?モテてたんですけど、なぜか特定の人っていなかったみたいで。先輩が卒業してから、私、先輩の家の近くに行ったんです。なにしてるんだろう、私。とか思ったんですけど、その時偶然先輩に会えて、メアド交換して時々遊んでくれるようになったんです」
「はいそれ。よくない」
「え?」

おねーさんが顔をしかめてちょいちょいと指先を振る。

「遊んでやってんだ、って。付き合ってやってんだって思ったっていいんだよ」
「でも」
「言ったでしょ?ハルが智美ちゃんをここに連れてきて、私と会わせたんだから。ハルは本気なの。それは間違いないの」

おねーさんの手が伸びて、私の髪の毛を指先でクシュクシュと撫でた。

「う…うん」

私は涙が出そうになった。
なんとか頷いたら、笑ってまた私の頭を撫でた。

「…ねえ、もしかしてchuもしたことなかった?」
「えっ?あっ。あ、あの」

顔か熱くなっていく。さっきの出そうになった涙なんて引っ込んでしまう。

先週。
先週のデートの時に初めてしてくれた。おでこだったけど。

「なんだ。あるんじゃない」

ただ狼狽えるだけの私を見ておねーさんには判ってしまったらしい。

「その、おでこに……」
「は? また中途半端なことを……。でも、ま。そういうのもいいね。高校生だもんね。いいなあ」

おねーさんは布団の上にぱたんと寝ころんだ。

はい?
なにがいいのかわからない。

「ふふふ、わかんないって顔してる。いいのいいの。私も高校生や大学生の頃の圭さんを見てみたかったな」

おねーさんはひとりで納得してるみたい。

「美里さんは彼氏さんと何年付き合ってるんですか?」
「私も1年半ぐらいかなー」
「へえ。私も馴れ初めきいていいですか?」
「もともと、彼はここに、同じアパートに住んでいたの。この階の階段上がってすぐの部屋。私の部屋の方が広かったから、ほら、この部屋角部屋だから、彼の部屋は引き払ったけどね。すごーく落ち込んでいた時に、私にパワーをくれてどん底から掬い上げてくれた人なの」

そういうおねーさんの顔は、年下の私がいうのもヘンだけど、すごく可愛らしかった。

「なんで落ち込んでたの?」
「それはないしょ」

おねーさんは人差し指をくちびるにあててから笑った。

私たちは、キッチンの隅で眠り込んでしまった先輩をほったらかして朝まで他愛のない話を続けたのだった。





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