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ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
【二次創作 官能小説】

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ラインハット編 その七-2

 月日は流れ、メアリも半月後に亡くなった。それでも、苦しみに耐える妻の症状を和らげることができたのだと、カッシュは満足していた。
 彼女の葬式は光の教団の形式に乗っ取り、火葬後、遺骨を教団へ奉納した。その時からカッシュは光の教団に入信し、マリアと兄ヨシュアもまた洗礼を受けた。
 敬虔な信徒と化したカッシュには仕事が与えられ、日々教団員獲得に尽くす。兄のヨシュアも父の勧めから兵士となり、マリアは従者として教団の手伝いをすることとなった。
 母の病に酒浸りになった父が活力を取り戻し、兄とともに新たな仕事を始めたことを、マリアは嬉しく思っていた。
 だが、一方で宗教である光の教団が、何故兵隊を組織するのかがわからなかった。

 ある日、マリアは経典であるイブールの本を開いた。
 共に働いていた友人が例の流行り病に倒れてしまい、苦しそうに呻いていたからだ。
 かつて母の病を和らげたとされる鋼塵の説ならばそれを緩和できるだろうと、マリアは必死の思いでページを捲る。
 だが、鋼塵の説などどこにも無く、いかに光の教団が偉大か延々くどくどと印されているだけであった。
 仕方なく父に相談し、鋼塵の説を読み聞かせてもらうことにした。

 ――我が鎧は完備なり。何者をも、何物をも寄せ付けぬ、時の迷い子よ、鋼を模して時を凍らせよ……。

 父の朗読のおかげで友人の表情は安らかになる。母と比べれば体力のある友、医者に診てもらえばなんとかなるだろうと、マリアは安堵した。
 だが、同時に気になることがあった。
 先ほどの朗読の一部に精霊を頼る一文があったこと。鋼塵の説とは、本当は魔法の類なのではないか?
 精霊を使役するための魔法力は、本来誰にでも備わっている。
 細かく丁寧に詠唱を行えば、素養の低い者でもその力を借りることができる。
 逆に、それがなんであるかを知らずとも、プロセスを実行すれば可能となる。
 あの時、母の額に手を当てたのは対象を指定するためで、行っていたのは魔法……。
 マリアはそう思い至り、街のルビス聖教会へと走った。

 マリアの断片的な詠唱から、修道士の一人は一つの魔法に思い当たる。

 アストロン。

 一時的に対象の時の流れを変え、全てから遮断する魔法。魔法や物理的な攻撃、炎や吹雪、その他一切から干渉を受けることがなくなり、逆に干渉することもできなくなるという。その様子が鋼のように強靭なことからアストロンと呼ばれている。
 魔法に疎いマリアには耳慣れないものだが、内容を聞いているうちに深刻さに気付き始める。
 アストロンに療養の要素は無い。魔法にかかっている間は確かに症状はでないかもしれないが、時間をスキップしているにすぎないのではないか?
 今、病に臥せっている友はいい。暫くすれば本職の医師に診せれば良いのだ。それまでの時間稼ぎには十分な効果があるだろう。
 だが、母にはどんな意味があっただろうか? 慣れない魔法を使い、疲労する父。その半月後には母もこの世を去った。
 教団のあの男の目的は信徒の獲得。庶民の不幸にかこつけて、そこに付け入る。だとしたら、父や兄は……。
 マリアは急いで教団へと戻った。
 父と兄に真実を話し、そして脱会しよう。いや、それだけではなく、他の騙された信徒達にも真実を話さねばならない。
 そう強く意志を固めたマリアだが……、
「どこへ、行っておりましたか?」
 友人の寝ていた宿舎へと戻ったマリアを出迎えたのは、あの時の男の声。ローブ姿の土気色の男は暗い部屋の中、友の寝ていたベッドに腰をかけており、右手を翳すと眩い光を放つ。
「うっ、げほげほ……げほ……」
 途端に咳き込み始める友。マリアは駆け寄ろうとするが、男に遮られる。
「時の精霊は気性が荒いんですよ。精神を異常に消費するというのに、貴方は父親にそんな重労働をさせようというのですか? まったく、信徒は教団の大切な財産。つまらないことで減ったら大変じゃないですか……」
 やれやれといった様子で被りを振る男。マリアはその手に抗うようにするが、所詮は女の力。せいぜいその振動でローブがずれる程度だが、
「ひっ!」
 フードがずれ、土気色の顔が見えた。そこには真っ赤に光る目が二つ。白眼の部分が無く、目玉一つが丸ごと瞳なのか赤一色で、それでも彼女を睨むのがわかるほどの凄みがあった。
「貴方、人間じゃない……!?」
「ええ。そんな下等な生き物ではありませんね。ま、貴女には縁のないこと。これから奉仕者として教団に尽くす貴女にはね……。くふふふふ」
 気味の悪い声で笑う男はマリアの額に爪を立て、紫の霧を放つ。マリアは呼吸を止めて抗おうとしたが、それは彼女の皮膚表面にまとわりつき、じわじわと浸透する。
 そのまま彼女の意識を奪っていった……。


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