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ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
【二次創作 官能小説】

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ラインハット編 その七-3

??――??

 マリアが再び目を覚ましたのは、薄暗い倉庫の中だった。垢の臭いと魚の腐った臭い。それに酸っぱい臭いがして、蠅の飛ぶ音がひどい。
 ――ここは……?
 周囲を見渡すも明かりが乏しい。ただ、たまに聞こえる粗い息遣いを聞くに、かなりの人が閉じ込められているとわかる。
 それに絶えず揺れる地面。ここが船だとわかるまでに、数秒かかった。
 目が慣れるに従って、周囲の状況が見えてくる。女性ばかり十数人が閉じ込められていて、船酔いや不自由な空間に閉じ込められたことでの不満と苦痛からか、呻き声がそこかしこから上がる。
「うぅ……」
 マリアの肩にどさっと何かがのしかかる。それは意志を持っての行為ではないようで、彼女が少し身体を捻ると、そのまま地面に倒れ込む。
「もし、大丈夫ですか?」
「み、水を……」
 うつ伏せのまま手を伸ばす中年の女。マリアは彼女を抱き起こし、その手を取る。
 水を望む中年女の希望をなんとか叶えてあげたい彼女だが、およそ船の中でしかも明らかに監禁されている状況においてそれは絶望的。
「しっかり……」
 気休めの言葉も思いつかないマリアは握る手がだんだん弱々しくなることを感じていた。そして、がくんと船が揺れた後、その手が最後の力を振り絞るかのように強く彼女の手を握り、そしてくたりと垂れる。
「おばさん? しっかり……、しっかり!?」
 肩を揺さぶるも反応は無い。疲労からか半開きの瞳に生気はなく、徐々に瞳孔が広がるのが見える。
「もうそいつはだめだよ。ほら、そっちに運ぶから手伝いな……」
 マリアの背後から別の中年女性の声がした。今しがた死体に変わったそれの両腕を掴み、マリアに足を持つように首で指図する。
「あ、あの……」
 有無言わせずに歩き始める女。マリアはひとまず中年女性の亡骸の足を持ち、それに続く。
 そこまで広くない部屋の隅っこへいくと、一層蝿の音が酷くなっていく。
 そこには数人の女性が倒れ、互い違いに覆いかぶさっているが、よくよく目を凝らすと、それが何なのかわかる。
 中年女性は呼吸を我慢しながら新たな亡骸をそれに重ねる。黙祷のみ捧げると、マリアの手を引いて急いでその場から去る。
「あの、ここは一体?」
 中年女性がようやく息をしだしたのを見計らって、再び質問をする。
「さあね……」
 しかし、彼女もあまり詳しい状況はわからないらしく、床にどっかりとすわると油ぎった髪をぐしゃぐしゃとかく。
「それよりあんた、よく生きてたね」
「え?」
「あんたはずっと寝ていたんだよ。ま、目が覚めないまま死んじまったほうが楽だったかもしれないけどさ」
 くくくと気味の悪い、力ない声で笑う女にマリアはだんだんと自分の置かれた境遇を理解し始める。
 あの日、不気味な男に遭遇し、魔法の類で正気を奪われたのだろう。そして、その間にここへ運ばれた。おそらく他の人達も似たりよったりの経緯のはず。
 では、どこへ向かっているのか? もしかしたら奴隷として売られるのだろうか? サラボナやテルパドールの豪商、富豪の黒い噂は話半分程度に聞いたことがある。ただ、それにしてはここにいる女性の面々は様々すぎる。もし、人買いの類なら、もっと見栄えの良いものや、若い、幼い子のほうが金になるのではないだろうか? お世辞にも目の前の女は器量が良いとはいえず、なにか特殊な能力があるようにも見えない。
 ならば、単純な労働としてではないか? そう、最近の噂である、神殿建設の奉仕者……。


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