フェイスマン-4
「危ないっ!!」
怖くて身動きがとれずにいたら、その人が体を張ってもう一度受けとめた。
必死に立ち向かおうとして、その球体を抑えつけている腕が震えているのが見える。
「待っていてくれ、すぐにこいつを退治するから。君の不安を取り除くよ!」
あの不気味な丸い物体は、私の口から出てきた。
そういえば昼間、このニーなんとかっていう怪物は、人間に取り憑くって言ってたっけ。
一体いつから私の中に入ってたんだろう。全く気付かなかったけど、おぞまし過ぎてもっと吐いてしまいそうだ。
「ぐあっ!!」
球体から触手みたいなものが生えてきて、その人の顔に鞭みたいに振り下ろす。
でも、何度叩かれても決して自分の体から離そうとしなかった。
「うぐぐぅ・・・!」
いつまで経っても相手がしつこいのに痺れを切らしたのか、球体が触手を首に巻き付けた。
そして、渾身の力で締め上げている。
「ま、負けるものか・・・僕が倒れたら、地球はニートデスに支配されてしまう・・・!」
私は、ただ見ている事しか出来なかった。目の前で誰かが命の危機に晒されているのに、指を咥えて立ちすくんでいた。
「が、頑張って・・・!」
恐怖で押し潰されそうな喉から必死に搾りだした精一杯の言葉。
「うぉぉぉぉぉ!!」
それが弾みになった、のかは分からないけど、その人は首に巻き付いた触手を引き剥がした。
そして、両手で球体を軽々と持ち上げ、前方にぶつける様に放り投げた。
球体は床に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
「・・・お、終わったの?」
「いいや、まだだ。死んだふりをして油断させるつもりだろう、こいつらのよくやる手さ」
上にかざした手に光が集まっていく。
小さかったその光はみるみるうちにバレーボールくらいの大きさまで膨れ上がった。
「フェイスクラッシュ!!」
光を投げ付けられ、直撃を受けた球体は破裂し、跡形も無く消えてしまった。
「・・・ふう、退治完了、だな。怪我は無いか?」
「な、何とか。そっちこそ大丈夫?」
「今日は軽い方さ。生死の境を彷徨う程の怪我など、日常茶飯事だからね」
私はただ見ているしか出来なかった。
「僕が闘う相手はいくら倒してもいなくならない。でも、諦めたら人間の平和が蹂躙されてしまう・・・だから、諦めてはならないのだ」
格好良い事を言ってるつもりだろうけど、そのポーズのせいで全く決まっていない。
「では、さらばだ。ニートデスには気を付けなさい!」
そういうと、その人は自分で割った窓から飛び降りた。
すぐに外を見たけど、もうどこにも姿は見当たらなかった−