今までで最も長い二日間2-2
家に帰ってから日記を見ながら彼の事を思い出してみた。不思議なもので今まで思い出しもしなかった事が思い出されて来た。
「初めは戸惑う事も多いだろうけど、誰もがそうなんだから、気にしないで少しずつ慣れていけばいいよ!」
バイトに初めて行った時、仕事の内容を一通り説明された後、彼がこう言ってくれて少し安心した。
「仕事にも慣れて来たみたいだね!横山さんは仕事を覚えるの速いね!その調子でお願いね!」
彼にこう言われて少し自信が持てた。
「その皿は上の棚に入れておいて!」
私が戸惑っていると、すぐに助け舟をだしてくれた。私の事を気にかけていてくれた。その時は、誰にでもこうなんだろうと思っていたけど、もしかしたら私だったから....彼の想いを知ってしまった今は、そう思ってしまう....それは私の思い過ごしだろうか....
私が仕事でミスをしても彼はその事を責めたりしなかった。私が初めてミスをしたあの時も....
「申し訳ありません。」
オーダーミスを指摘された私はすぐに謝罪した。
「どうしたの?」
先輩がすぐに来てくれた。私が状況を説明すると、
「申し訳ありません。すぐにお持ちいたします。」
そう言って、厨房のほうへ走って行った。私はただ謝るしかなかった。
「そんなに謝らなくてもいいですよ!私達は別に急いでいる訳じゃないですから!」
そのお客様は優しく私に声をかけてくれた。そこに美香さんが来てくれた。
「お客様申し訳ありません。」
深々と頭を下げた。
「私達は注文した料理を食べられればいいのだから、そんなに謝らなくてもいいですよ。」
美香さんにもそう言ってくれた。
「ありがとうございます。注文されたお食事はすぐにお持ちいたしますので、申し訳ありませんが、もうしばらくお持ちください。」
美香さんに促されて、
「申し訳ありませんでした。今しばらくお持ちください。」
私達は深々と頭を下げた。美香さんは私の背中に手をまわして、
「行こう。」
小声で囁いた。
「ハイ....」
私は力無く頷いた。厨房に戻ると、
「大丈夫だからね。」
美香さんはそう言って仕事に戻って行った。
「この忙しい時に....」
私を非難する声が聞こえて来た。
「ホラそこ!口を動かす暇があるなら手を動かせ!!文句を言う暇があるなら一秒でも早く仕上げる事を考えろ!!次のお客様も待たせる訳にはいかないんだぞ!!わかっているな!!」
「ハイッ!!」
彼の一喝で私を非難する声が消えた。私は少し救われた気がしたが、いたたまれない気持ちは変わらなかった。私のミスをカバーするためにみんな必死になって働いている....だけど私は何も出来ない....ただ見ているだけ.....自分自身が情けなかった....