けんぽなし〜ニゲル〜-5
耕太郎の自転車が着いた先は、透蒔の家の駐車場…
そこには2人を双方の両親が取り囲んでいた。
その輪から少し離れた所に空がポツンと立っている…
ー…あれ…
「みんなは?」
私、空に駆け寄ると小さな声で囁いた。
「俺らだけだよ、あいつらもそんな騒がれたくないだろうし…けど、お前また暴走するだろ?1人で飛び出して行くだろ?」
ー………空…
「何やってんだっ!!」
ガッー
透蒔の父さんが、透蒔を殴りつける…
ーヒっ!!
私、思わず両手で顔を覆った。
「もう帰るわよ!!いい加減にしなさいっ!!」
そして、月明かりの下、マンション下の駐車場に綾の母さんの声が響く…
「いやっ!!帰らない!!母さんも父さんも何も聞いてくれないじゃない!!」
綾は透蒔の腕を握り締めていた。
透蒔は父さんに殴られても倒れることなく、綾の前を動かない…
「だからって逃げてちゃ何の解決にもならないでしょ」
「じゃあ、ちゃんと聞いてよっ!!…私の話ちゃんと聞いてよっ!!」
「ーっ、だから、それは帰ってからゆっくり…」
「!!っ、やーーーっ!!いつもそう、いつもいつも、後回しで…でも、それでいいと思ってた、それが当たり前だと思ってた…だから…私はずっといい子で来てたでしょ?ちゃんといい子で来てたでしょ!?私の言葉がちゃんと届いてると思ってたのっ、真剣な言葉は聞いてくれると思ってたのに……」
綾、そう言うと透蒔の後ろで小さく肩を震わせた…
突然、静寂が襲う…
耳が…
つんとして…痛みが走る…
ガチャっ、バタンっ
!!っ
静寂を打ち破った車の戸…
「あや、おかえり」
ーあっ…
それは、綾の双子の弟、亮(りょう)だった。
あの頃は知らなかったけれど、亮はダウン症を抱えている。
確かに、言葉が遅くて…
だけど、私達と何一つ変わらずに遊んで、ケンカして、笑って、泣いて…
本当に何一つ変わらない…仲間だ。