図書室で先生と。-2--4
目の前には、
何故か、
…橘…が。
「せ………」
おれは橘の言いかけた口を塞ぎながら取り敢えず本棚の影に引き寄せる。
(せんせぃっ…な、なにっ……)
モゴモゴとおれの手の平の中で橘の唇が動く。
『はぁっ…あぁんっ……』
そこに宮下先生の嬌声がおれたちのところまではっきりと聞こえてくる。
嬌声の合間にもちゅばちゅばと卑猥な音も響いておりさすがの橘も状況を何となく察したみたいだった。
耳まで一気に赤くなる橘を、今後ろから口元を塞いで引き寄せてる状態。
手の平に橘の熱い湿った息がかかる。
『はぁんっ…気持ち…イイ…ぁんっ…』
『はぁ…先生っ…』
びくっとする橘の肩。
(相手が生徒だってこともバレたな…)
(ダメだ…これ以上ここに居させられない。)
橘の手をとり、静かに歩き出した。
「…せん…せ…」
小さい声でおれにようやく話し掛けるけど、おれは自分の口元に人差し指を置くジェスチャーでそれを一旦遮る。
出来るだけ音を出さないように司書室まで行き、自分の荷物と再び橘の手を握り静かに図書室を後にした。
―――――
「…大丈夫、か?橘…」
大丈夫な訳はないと思うが他に掛ける言葉が見つからなかった。
「………。」
学校から出て、急いでおれの車まで来て、取り敢えず橘を助手席に座らせた。
ふと橘の顔を覗く。
少し上気した頬と潤んだ瞳。唇は下唇をきゅっと噛むようにして少し緊張した表情と、手は固く握り締めて膝の上に置かれている。
そんな橘を不謹慎だとは思いつつもかわいいと思ってる自分が居る。
宮下先生と男子生徒の関係を知った今、おれの中で想像しないはずがない。
現実に『先生』と『生徒』で、あんな関係になるなんて何故かあまり真剣に考えたことがなかった。