ヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃん-3
「それじゃぁ行って来ます。」
私達は歩き始めた。
「気をつけてね。」
母の声に
「はぁい」
そう答えた。私は右手をユキ姉ちゃんと左手をヒロ兄ちゃんとつなぎ、二人の間を歩いた。ヒロ兄ちゃんは大きなバッグを左肩にかけていた。
「ネェヒロ兄ちゃん、そのバッグの中に何が入ってるの?」
私はヒロ兄ちゃんが左肩にかけているバッグの中が気になった。
「ユキが作ってくれたお弁当とかいろいろ入ってるよ。」
「ユキ姉ちゃん本当に作ってくれたの?」
私はユキ姉ちゃんの顔を見上げた。ユキ姉ちゃんは目線を下げて、
「美香ちゃんと約束したんだもん、当たり前でしょ!!」
「楽しみだなぁ。」
「美香ちゃんの嫌いな物が入っていないといいんだけど....」
ユキ姉ちゃんは少し心配そうに言った。
電車を降りて、水族館へ向かう道を歩いていると、土曜日だからか家族連れが目立った。両親に甘える子供を羨ましそうに見ていたのかユキ姉ちゃんが、
「美香ちゃん、やっぱり、お父さんやお母さんと来たかった?」
笑顔で聞いてきた。
「うん......」
私は思わず頷いてしまった。
「やっぱりお母さん達と一緒がいいよね....」
ユキ姉ちゃんは少し淋しそうに言った。
「でも....ヒロ兄ちゃんとユキ姉ちゃんが一緒だから淋しくないよ!」
「美香ちゃん、無理しなくてもいいんだよ。」
ヒロ兄ちゃんが優しい声で言った。
「無理してないよ!ただちょっと甘えてみたかっただけ....」
「お姉ちゃんには甘えられない?」
頷く私を見て、
「そっかぁ.....じゃぁ....今日だけ、私が美香ちゃんのお母さんになってあげるから、好きなだけ甘えていいって言ったらどうする?」
「本当に!!いいの!?」
「美香ちゃんさえ良ければ、私じゃぁちょっと頼りないけどね!!」
「そんな事ないよ!」
私は少し考えて、
「ユキ姉ちゃんの事ママって呼んでいい?」
「もちろんいいよ。」
ユキ姉ちゃんは笑顔で言ってくれた。
「じゃぁヒロ兄ちゃんはパパだね!?」
私はヒロ兄ちゃんの顔を見上げて言った。
「なんか頼りないパパだね!?美香ちゃん!」
「そうだね!」
「ユキ!美香ちゃん!」
ヒロ兄ちゃんが少し怒ったように言うと、
「パパが怒った!」
ユキ姉ちゃんはそう言うと私の手を引き走り出した。私はヒロ兄ちゃんとつないでいた手を離してユキ姉ちゃんと走った。
「ユキ!美香ちゃん!」
ヒロ兄ちゃんが追いかけて来た。私達は簡単に追いつかれた。
「ゴメン、ヒロ!!」
「パパ、ゴメンなさい!!」
私達が素直に謝ると、
「仕方ないなぁ....」
ヒロ兄ちゃんは簡単に許してくれた。
「パパ、ママ、早く行こう!」
私は二人の手を引き歩き始めた。
「美香ちゃん!わかったから、そんなに引っ張らないで!!」
ユキ姉ちゃんが言うので、ゆっくりと歩いた。