〈利益の卵〉-12
『あとコレも履いてね』
カーテンの隙間から、白い薄手の布が差し出され、美優はそれを手に取った。
それはスベスベとした感触のニーソックスであった。
(なんで水着にニーソックスなんだろ?組み合わせがオカシいよね……)
勿論、どう思おうが、美優に拒否権などは無い。
全ては指示通り、ただ言う事を聞くだけの、生きた着せ替え人形のようなものだ。
その事に、美優が違和感や不快感を覚えたのだろうが、それこそどうなるものでもない。
着替え終えたら、カメラの前に立つしかないのだ。
『お〜、今日も可愛いね!さあ、元気にお仕事しようか』
スタッフの、いつものお世辞に、美優は少し、はにかんだ。
アイドル・佐藤みゆうの人気が上がるにつれ、カメラとスタッフの人数は次第に増えていき、カメラの台数は5台を超えるまでになっていた。
『美優ちゃん、その机に寝転がってよ』
そこには二つの机が並べられ、さながらベッドのようになっていた。
美優は少し硬い表情を浮かべて、言われるがままに机に仰向けに寝た。
(今日は何時間するんだろ?…嫌だよ……早く帰りたいよ……)
美優は気が気でなかった。またカメラマンは、恥ずかしい姿勢を強要し、シャッターを切るのかと思うと、憂鬱を通り越して逃げ出したくなってしまっていた。
数台のカメラが寝そべる美優を取り囲み、パシャパシャとシャッターを切っていく……それはまるで、美少女を視姦しているかのような錯覚を起こさせる。
『うん、イイね!イイよ!!』
『美優ちゃん、笑って……そうそう、ニコッてして……』
寝転ぶ美優を数人のカメラマンが入れ替わり撮影し、あらゆる角度から美少女の身体を記録していく。
滑らかでスベスベと輝く素肌は、それ自体が宝石と呼べる程に美しく、産毛のような体毛は子猫を連想させる可愛らしさだ。
『じゃあさ、机から脚伸ばして、この椅子の上に踵を置いてよ』
スタッフの指示に、美優は少し戸惑いながら、それに従った。
自分が何も知らないのをイイ事に、また破廉恥な行為を想像させる写真を撮るのではと、不信感をもっていたからだ。