百獣の女王 U-5
「マリア」
彼女がもう一度、その名前を口にする。
「マリア」
「マリア」
「マリア」
それから彼女は何度もその名前をつぶやいた。
そしてふいに立ち上がる。
「マリア」
つぶやいて一歩。
二歩、三歩。
「マリア」
立ち止まった。
「マリア」
彼女の後ろ姿が見える。
足首まで伸びるドレスのスカートと同じくらい、彼女の髪は長かった。
その長い髪をすらりと揺らして、彼女が振り返る。
「よく分かりましたね」
彼女がそう言って、
「私の名前はマリアです」
どこか嬉しそうに微笑みながら、俺に自己紹介をした。