盛春の一週間-1
〜日曜日の自由〜
俺は、犯罪者だ。
17歳にして、強姦・強請・脅迫罪。
ま、まだ捕まっちゃいねぇんだけどな。
…にしても、なんでアイツはいつまでもおとなしくしてんだろう。
何度も黙って俺にヤられるなんて。
そうなんだ、最近じゃ、抵抗するどころかメッチャよがって喜んでる。
何を考えてんのか、さっぱり分からない。
…けど、まだ自由なんだから文句は言えねぇよな。
こうして新緑の季節に、愛車のバイクを走らせるのは、長年の夢だったからな。
やっと取った単車の免許や、ローンの残るバイクをムダにはしたくない。
アイツに感謝だ。
アイツ、とは。
…ブ〜ブ〜
メールが来た。
《無題
:駅に着きました》
…―コイツだ。
片桐 亜紀子。
《RE:
:牛丼屋の前にいる》
グローブをはずして、返事を送る。
《RE:
:どっちの?》
片桐からのメールは、いつもそっけない。
絵文字なんてめったに使わない。
最初は俺相手だからかと思ったが、そうでもないらしい、クラスの女子が話してるのを聞いたことがある。
だから俺も、いつも簡素なメールを返す。
《RE:
:駅から遠い方》
学校のヤツらに見られたら困るからな。
そりゃそうだ、俺達は付き合ってるワケじゃないんだから。
俺、風間 朔光と、片桐 亜紀子の関係は、脅迫で成り立っている。
「…サク?」
後ろから声を掛けられた。
そっか、今日は半メットにサングラスだったから、分かりにくかったかな。
そもそも私服で会うのは初めてかも。
揃えたかのように、お互いシンプルだ。
言っておいた通り、ジーンズを履いてきている。
フルフェイスの方のメットを、片桐に貸すためバイクから外して渡す。