百獣の女王 T-13
『は? 草?』
『そ。草食系とか肉食系とかあるじゃない?』
『確かに俺って、茂みたいな感じじゃないけど』
『そーじゃない。草食系じゃなくて、ただの草って意味』
『え?』
『存在感なさ過ぎて誰にも見てもらえないところとか、あと名前』
『名前は関係ないだろ・・・って俺、植物扱いされた?』
『植物っていうか雑草ね』
『ひどい。いくらなんでも雑草扱いは酷過ぎる』
『・・・・・・んー、やっぱり違うかな?』
『せめて草食系に』
『うんそうそう。あれだ。あれ』
『あれって?』
『お弁当とかについてるじゃない?! ペラペラの草!』
『・・・・・・』
『そうよそう。草太って絶対あんな感じ。だから美佐ちゃんにも振られるのよ』
『いや、え? あのプラスチックの草? っていうかなんで振られるって? ええ?』
『ほら、美佐ちゃんってウサギっぽいじゃない?』
『いや宇佐木って苗字だけだろ』
『草太がしつこく食べろ〜食べろ〜っていうから試しに食べてみたらプラスチックだったんでぺって吐き出した、って感じ』
「滅茶苦茶だ」
今思い出しても苦笑いが浮かぶ。俺をプラスチックの草扱いするのが綾菜だった。
口では酷いと言ったけれど、実のところ俺は内心では嬉しく思っていた。
綾菜はコンビニ弁当などによく入っているプラスチックの草をガムのようにくちゃくちゃとするのが好きだったからだ。
唐揚げ弁当を食べても、とんかつ弁当を食べても、カルビ弁当を食べても、最後には必ずプラスチックの草を口にする。
だからそれでもいいか、と思うようになった。
綾菜がどんな男と遊び歩こうと、最後には必ず俺のところに来てくれる。
待っていれば綾菜と一緒に居られる。
ずっと、一緒に居られる。
待っていれば、いつかは俺のこと、
「そんな訳ないのにな・・・・・・何考えてんだろ」
全然、知らない人
俺は頭を抱えた。