悪夢の日々-13
その日、あたしは学校に残って宿題を済ますことにした。
家にいると落ち着かなくて。
それが…気が弛んだのか、英単語を10も調べる前に、辞書を枕に眠ってしまった…。
…夢を見た。
後ろに入れられた、一回目の時の。
都合良く、気持ちの良かった場面だけが再生される。
あの時はイッた直後こそ、いつも通りに軽口叩いたけど、お兄ちゃんの腕の中で、すとんと眠りに付いて。
そして目覚めた時、お風呂場での悪夢を思い出して青ざめたっけ。
でも、優しくキスして、気持ち良かったって、お兄ちゃんは褒めてくれた…。
その時だった。
本当にくちびるに感触があったんだ。
あたしが知っているキスはお兄ちゃんだけで。
どこでうたた寝していたかも忘れて。
ぼやけた瞳に映った影に、声をかけた。
「…お兄ちゃん?」
そして、思い出した。
あたし今、学校じゃなかった…?
さぁっと血の気が無くなる。
「っふ、んぅ!?」
…―サク!?
それは、そのキスの相手は、サクだった。
ここ数日のサクからの視線を思い出すけど、それがどうしてこんなコトになるのか…さっぱり分からない!
当然容認できるわけもなく、必死で抵抗する。
けど…同い年の男子の力がこんなに強いだなんて知らなかった。
恐怖の前に、あのチビなガキだった頃のサクを思い出して、ただただ驚いてしまう。
あっさり組み敷かれて、あたしはもう口で訴えることしかできない。
「…サク!
なんなの、いきなり…!」
「…黙れよ。
大声出すんじゃねぇぞ。
出したら、制服引き裂いてやるからな」
なっ…!
「…脅す気?」
「…ふん、わかってんじゃん。
さっき、お前が自分で漏らしたんだろ?
まさか…"お兄ちゃん"がカレシとはな」
…―はぁ!?
なんて勘違い…!
「…違っ!」
「何が違うんだ?
アニキとヤッてんだろ?
俺にもヤらせろよ。
アニキと愛し合ってるって、皆にバラされたくなけりゃな」
「…違う!
お兄ちゃんは…カレシなんかじゃない!」
…―そうなの、お兄ちゃんは、可愛いなっては言ってくれるけど、好きだとかは言わない。
もちろん、あたしも言わない。
だって、そんなんじゃないから。