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「負けないで」
【アイドル/芸能人 官能小説】

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「負けないで」-5

日中は暑さとの戦い。
焼ける様な直射日光。
蒸せる様な路面の照り返しがみるみるアタシたちの体力を奪い去ってゆく。

正午過ぎ。
走りだしてから幾つ目の休憩ポイントだろ。
みーたんに軽い熱中症の兆しが現れだした。
リタイアかも知れない。
にわかに慌てだしたスタッフ。
当然と言えば当然だけと無理をさせる訳にはいかなった。
「みーたん…後はアタシに任せて、ゆっくりと休んで」
アタシはぐたっと寝そべり。
氷嚢で顔に溜まった熱を冷ましているみーたんの手を握った。
「よ…よっちゃん…さん…私…私」
アタシを見つめるみーたんのつぶらな瞳にみるみる涙が溜まってきた。
「心配しなくて…いいからね」
汗まみれの顔でみーたんに笑いかけるアタシ。
「よっちゃんさん…私…走りたい…よっちゃんさんと一緒に走りたい」
みーたんの瞳から溜まった涙が溢れてくる。
みーたんの気持ちを考えるとアタシも何と言っていいか判らない。
「みっちゃんさんの…代わりには成れないかも…知れないけど…よっちゃんさんと一緒に走りたい」
みーたんの瞳、涙が止まらない。
アタシも熱いモノが胸に…。
瞳に込み上げてきた。
アタシ…みっちゃんへの想いを引きずり続ける事で。
みーたんを凄く苦しめていたんだ。
そんな事に今頃になって気づくなんて…。

一時間後。
アタシたちはふたりで再び走り始めた。

夕方。
幸いにもみーたんの状況はだいぶ元に戻っていた。
ただ、ふたりとも足や腰はボロボロだった。
それでも走り続けるしかなかった。
番組の為?
確かにそれもある。
オファーを受けた以上はきっちりとこなしたかった。
でもアタシたちが走り続ける理由。
それは他でもないアタシたちふたりの為だった。
そして…。

陽も暮れてからずいぶん経った。
ゴールの東京文化体育館もだいぶ近づいてきた。
「みーたん!よっちゃん!あと少しだ!」
サポートカーの中から松田さんも声を枯らして叫び続けている。
「ハァ…ハァ…ハァ」
朦朧としながら走り続けるアタシ。
サポートカーの中からは松田さんの声と共に。
東京文化体育館での歌声がポータブルテレビを通して聴こえてくる。
負けないでぇ♪もぉすこし♪ゴォォルは近づいてる♪
どんなに♪はなれてても♪心は傍にいるわぁ♪
『負けないで』だ。
アタシやみっちゃんが大好きだった曲だ。
アタシのその曲を虚ろに聴きながら。
横を走るみーたんに目をやった。
みっちゃん!?
遠く旅立ってしまったはずのみっちゃん。
そのみっちゃんがニッコリ微笑みながら。
アタシとみーたんの間を走ってる。
みっちゃんの両手がアタシとみーたんの背中を押してくれてる。
“あと少しだよ…がんばろう!”
みっちゃんの声。
みっちゃんの懐かしいキラキラとした声が聞こえた。
そしてみっちゃんが…。
みーたんと重なってゆく。
みっちゃんとみーたんがひとつとなった。
走っているアタシの瞳から涙が溢れて止まらなかった。
いつもアタシたちと一緒にいるんだね…みっちゃん。


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