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援助交際
【学園物 恋愛小説】

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援助交際-3

「もういいよ、この役立たず。相談する相手間違えた!」

静かに早口でそう言うと入ってきた時とは全く違い、さっさと職員室を飛び出してしまう。
殆ど相談を持ちかけてきた事も無い生徒が、わざわざ担任の所にやってきた。
それも他の生徒がいない職員室という場所を選んで・・・

普通に考えれば軽い相談では無いことくらいわかるのに、今のポンコツな俺には分からなかった。
東宮の気持ちを汲もうともせず、奇抜な風貌のわりに喋り方は普通なんだなと、初めて喋った時からずっと思っていた事を考えていたのだ。
相談してきた相手に対して失礼だったな、と反省したが後悔先に立たず。


(家族とどう話したらいい、なんて・・・・俺は只の数学教師なんだ。そんな問題を解ける数式、あんのかよ?)


俺はこの時、もう2度と東宮は自分に意見を求めには来ないだろうと思った。
あいつがもう姿を見せる事は無いのと何も変わらない−


「・・・痛ぇ」


東宮が引っ掻いた髭を触ったら、まだ肌に痛みが残っていた。
何やってんだ、生徒を適当にあしらって・・・・


その日はいつも以上に早く帰るのが嫌で、コンビニで買った酒の袋をぶら下げながら空を見上げた。
時間は俺に黙って勝手に流れていたらしく、ちょっと座っていただけなのに、もう街灯が目に焼き付く位空は黒く塗り潰されている。
何で時間というのはスクラップになった奴を置き去りにして、流れていくんだろうな。
人間の心というのは雑草の様にはいかないんだ。引っ込抜かれたらそのまま、何も生えてこない。

ああ、そうだ、俺は強くない。
教師だからって強くなくちゃいけない理由が何処にある?


・・・・・・こんな俺を必要としてくれる誰かが何処かにいるのだろうか。


そう考えて、もうあいつの影を追い求めるのを止めようとしている自分に気付く。


「もういいよっ!!絶対帰らないから!!」


ふと、すぐ近くで女の叫び声がした。
何事かと思うよりも先にどこかで聞いた様な声だと思い、目でその主を探していた。


「ひが・・・・・・東宮?」
「えっ?!だ、誰よおじさ・・・うあ、ああっ先生!」


もう2度と会いに来ないとさっきは思った。間違ってない、これは只の偶然だから。
おじさん、と言われかけて思わず鏡もついでに探してしまうところだった。
飲んだくれてだらしなくアルコールに呑まれている様は、老けて見えるかもしれない・・・・・・

でも、こっちも怒鳴った女が一瞬東宮には見えなかった。
・・・・真っ赤に腫れた瞳は弱々しく、昼間のこいつとは違って虚ろな雰囲気を纏っていたからだ。
泣いているなんて穏やかじゃないな・・・・・・


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