シグナル¨12¨-4
「おかえりー、賢司くん大丈夫?おーい」
「成敏、お帰り」
・・・遥、それだけなの?
ちゃんと笑顔のはずだよ。もっと誉めてくれたって・・・
「・・・大丈夫だった?」
終わって少ししてから、僕に囁く様に聞いてきた。
僕の手をしっかり握って、ちょっと痛いけど嬉しかった。
「ちょっと怖かった。でももう大丈夫だよ」
「そう、ならいいけど」
眉間に寄せていたシワが無くなり、ふわっと口元が綻んだ。
ちゃんと僕の事を心配してくれてたんだね。ありがとう、遥。
それから僕達は色んな絶叫マシンを乗り継いで、お化け屋敷で更に叫んで、心行くまで遊んだ。
「うっし、じゃあそろそろ帰るか」
「そうだなー。あーよく叫んだ、喉がガラガラだぜ・・・」
「疲れたね。でも、マジ楽しかった」
夏の時と同じ、どこか気持ちいい疲労感を感じながら、皆車に乗り込んでいく。
・・・遥は、まだ乗ってない。あとは僕と遥だけだ。
僕は運転席側から賢司に声をかけた。
「ごめん賢司、ちょっと待っててくれる?」
「ん、いいぞ。便所か」
「うん・・・ちょっとね。すぐ戻るから」
遥に、伝えたい事があるんだ。
だからちょっとだけ待ってて欲しい。
「ちょっと来てくれる?遥」
「どこ行くの。トイレ?」
「・・・2人になれる場所に行きたい」
「いいけど。でもどうしたの急に・・・ま、待ってよ!」
ちょっと無理矢理だけど遥の手を引いて、車から離れていく。
駐車場から出た辺りで歩くのを止めて、遥と並んだ。
「僕達さ、この一年色々あったよね。いつも学校に集まってた」
「うん・・・でも、楽しい事ばっかりだったよ」
遥の言う通り、思い返せば全部楽しい事ばかりだ。
本気で誰かを嫌いになったりしたことなんて無かった。
「皆さ、結構・・・一途、だよね」
今度は遥がぽつりと呟く。
どういう意味だろう、一途っていうのは。
「杏子は、賢司くん。弥生は、速人くんしか見てないっていうか、最初に決めた相手だけを見てたんだよ」
「僕達も、そうだ。最初・・・じゃなかったけど、会ってすぐにもう好きな人だけ見てた」
考えてみればそれは奇跡・・・っていうには大袈裟だろうけど、なかなか難しいと思う。
まだ僕なんてそれ程生きてもいないのに、素敵な友達や恋人に巡り会えたのは、とっても幸せな事なんだ。
皆も、きっと同じだ。
当たり前なんて思っちゃいけないんだ、奇跡なんだ。
だから・・・いつまでも続いてほしい。この関係を続けていきたい。