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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨12¨-3

次は織田さん念願の絶叫マシンに乗る事になった。
でもさっき言ってたジェットコースターじゃなくて、直下型の・・・いや、落下っていう方が合ってるかもしれない。

見上げた瞬間、織田さん以外の顔が凍り付いた。
特に苦手な葉川さんと遥は顔だけじゃなく全身が凍ったみたいに動かない。

柱のようなものを見て恐怖を感じたのは、この瞬間が初めてだった。
行くしかないのか・・・?

「ごめん、私パス。ここで見てる」
「私も・・・ごめん、こういうのダメなの」

葉川さんと遥がギブアップ宣言した。
出来れば僕も乗りたくなかったけど、でも・・・

(遥の前で情けない姿は見せられない。よし、いくぞ!)

「行こうか、織田さん。空いてるからすぐできるよ」
「さっきパスって言ってなかった成敏、無理しなくてもいいけど。速人代わりに連れてくから」
「や、やだっつってんだろ!絶叫マシンは嫌いだって、おいっ離せ!」
「成敏がやるんだ、男ならお前も行け。さあ」

賢司が速人を羽交い締めにし、織田さんが足を持って二人がかりで連行していく。
・・・さっきゴーカートで追突されたお返しかな、賢司は。

こうして4人でやる事になった。

「賢司くーん、頑張ってねーっ!見てるよー!」
「成敏、お盛らししちゃダメだよ。袋持ってた方がいいよ、念の為に」

2人とも恐怖から解放されたせいか、すっかりリラックスしている。
柵の前で待つ様子は、僕とはまるで正反対だな。

「はっ、遥!」
「はい?何か言った?」
「・・・見てて、笑顔で戻ってくるからね」
「うん、分かった。じゃ泣いてたら許さないから」

安全装置がセットされてマシンが上昇を始めた。
もう、今更逃げられはしない。あとは・・・やるだけさ。さあ、来い。
上がるスピードはかなり早く、あっという間に下にいる人達がどんどん小さくなっていく。
ここは普通に飛び降りたら大変な事になる高さだな。
さあ・・・もう、やるなら早くしてくれないか。

ゴウン、と外れた音がした瞬間、体に重力がまとわりついてきた。


「うああああああああああああああ落ちてる落ちてる!!!」
「きゃっ・・・あ、ああああ・・・!!」
「うぉぉぉぉぉ、怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「〜〜〜〜〜〜〜・・・っっっ!!!」

競りあがる空気が耳を覆ったけど、3人の声はそれに遮られる事も無く届いた。
みっともない速人、予想外に驚く織田さん、狼狽えている賢司。
そして・・・声にもなっていない僕。


僅か十数秒の出来事だったけど、果たして何年分叫んだか分からない。
日常ではなかなか恐怖で叫んだりしないから・・・


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